プライミング効果
プライミング効果とは、人は刺激を与えられると、その直後の行動が前の刺激に大きく左右されることをいうのだそうですが、一見へそ曲がりで、頑固なお母ちゃんも、こうしたプライミングにはすぐに影響されるようです。例えば、テレビのCMなどで、黒ラブがちらっとでも映ると、「ああムーちゃんだ!」と叫び、ボクの写真に駆け寄り、供えてあるリンゴを取り換えてくれます。黒ラブ=ボクではないので、正直言ってあまり愉快ではないのですが、お母ちゃんは現実派なので、黒ラブを見るとボクのことをリアルに脳裏に浮かび、思わずそう叫んでしまうのでしょう。
いかにもお母ちゃんらしい、十把一絡げ的な言い方なので特に気にしていませんが、最近はオヤジまで、どれどれなどといって、テレビの前に駆け寄ります。少し前までは、こうした場面になると、オヤジは、「ムサシはここにいる」と言って、自分の胸を指差していたものです。お母ちゃんにしてみれば、とうとうオヤジを自分のコーナーに引き込んだ気分で、してやったり、というところなのかもしれませんが、実はそうではないのです。人間は、わかりきったことでも、それを強調した刺激を与えられると、脳の働きが活性化し、その刺激に対して反応してしまうのです。
それが「プライミング効果」というものだ、と以前にオヤジから聞いたことがあります。つまり、オヤジもお母ちゃんも、「黒ラブ」という画像の刺激に脳が素直に反応しただけで、特に心境の変化があったわけではないのです。つまり、ボクのこと忘れていたというのとは全く違うわけです。それにしても、オヤジの対応の変化は少し気になる所ですが、ボクの存在を一々主張する必要がなくなったというのが、その理由だと考えれば納得できます。何しろ、プライミング効果についてボクに話したことさえ、忘れてしまっているわけですから、あれから歳をとらないボクと違うのは当然でしょう。