鍾景閣(旧伊達伯爵邸)
鍾景閣の入口付近から南を望むと、対岸の山々の森が燃えるように色づきを見せている。「渓流の道草」と名付けられた遊歩道を歩いていくと、すぐに名取川の流れが現れ、切り立った崖に張りつくように森が広がる。渓流の心地よいせせらぎを聴きながら、自然豊かな散策を楽しめる場所である。玄関横にある鮮紅色のどうだんが出迎えてくれる鍾景閣は、旧伊達伯爵邸で仙台市指定有形文化財。箪笥料理が有名だが、ランチは月替わりになっていて、秋は鮭のはらこご飯やきのこ料理を中心としたメニューが提供される。
食事の後は建物の構造やさまざまな細部を見学してまわる方も多いそうだ。また、建物の一部が二階建てになっているため、その少し高い所かこら景色を眺めるという眼福も味わえる。眼下の日本庭園を見下ろし、視線を上げれば目の前に迫る急峻な渓谷に展開される錦繍の絶景が堪能できる。玄関前には、臥竜梅ならぬ憧憬の松「臥竜松」の、樹齢三百余年と伝わる独特の姿も見ることができる。秋の一日、ゆっくりと時間をとって訪ねたい場所だ。
周辺には散策にちょうどいい小径がめぐらされている。紅葉を愛でながらのんびり時間を過ごすのもいい。また、スタッフが毎日手入れするという日本庭園の枯山水の美しい波紋も存分に楽しみたい。そして、昨年10月に提供されたランチ「秋味御膳」の一例をあげると、はらこめし、秋鮭蟹味噌チーズ焼、茸煮鮪和え、秋刀魚竜田揚げ等々、秋の食材を中心とした10種類以上からなる豪華な献立(2900円/税込み)。