柳津虚空蔵尊
国道45号線を石巻から気仙沼方面に向かって北上すると、津山の杉山が連なる中、鮮やかな朱の大鳥居が目につきます。日本三虚空蔵尊の一つ柳津虚空蔵尊は、神仏混淆の名刹です。太いものは幹回り5m以上もある杉木立と苔むした石畳が山門へと続き、まさに森閑とした別世界が広がります。「創建は今から1200年前、奈良時代までさかのぼります。行基さんが東国巡遊の際にここへ来て虚空蔵菩薩を刻み、黄土山の峰に創立して村の守護仏としたのが始まりです」と法性院寺庭の杉田史さんが話しています。
その後、空海が黄土山のふもとである今の地に移されたという。本堂の背後にあるのが黄土山で、かつては金山だったという。その名残の金を溶かしたような黄土山の黄金水が、本堂前に湧き出ています。山への道は稲荷堂、厄除け不動尊、奥の院へと続く。広い境内には、弘法大師が修業を終え、下山する際に祈ったケヤキの枝を挿したといわれる玉こぶのケヤキがあります。古来、いぼ取り、こぶ取りの霊験あらたかな巨木で、数年前に山火事で焼けたものの、炭となって浄化してくれると一層の信仰を集めているそうです。
他にも、江戸時代ご本尊の屋根修復時に、一夜で曲がったという"一夜松"。およそ千年前に大伴家持の庵があり、百人一首の「鵲(かささぎ)の 渡れる橋に おく霧の 白きを見れば 夜ぞけにけり」の恋歌を詠んだという鵲橋も 遺っています。その大伴家持が虚空蔵菩薩を拝した際に「かくも尊いものなれば三十三年ごとに開帳...」といったとか。その33年ぶりの開帳が今年、平成28年4月です。前回のご開帳の時は中学二年生で、ちょうど得度式だったという杉田寺庭は「多くの皆様に拝観していただけるよう三十三日間のご開帳期間とします」と話しています。