復興に向かう人々
気仙沼の斉吉商店は、「金のさんま」で知られていますが、震災前は、船主や乗組員の世話をする廻船問屋も営んでしました。船の給油や食料などの仕込みはもちろん、出港の準備を全てお世話する船首代行業で、自宅に招いて食事を振る舞ったり、休憩の場を提供するのが日常でした。そんな斉吉商店が「みんなの集まる場」を再現した店が「ばっばの台所」です。
提供されるメニューは、斉藤和枝さんの母・貞子さんの心づくしの料理で、旬の魚を載せた海鮮丼や気仙沼の郷土料理が中心です。例えば、ハクサイの古漬けと魚のアラ、酒かすを煮た「あざら」やサンマのうの花漬けなどで、まさに「ばっば」の知恵が満載の地元の味です。大勢で食卓を囲めば、まるで大家族のお昼時に招かれたようなにぎやかさです。
また、「気仙沼魚の駅」にも、地元の人たちの熱い思いが溢れています。被災した仲卸をはじめ9社が共同し、震災の年にいち早く、自力でオープンさせました。駅長を務める小野寺勉さんも、かつては仲卸が中心でしたが、「お見舞いをいただいたお返しに気仙沼の魚を贈りたい」という地元の人々の声に奮起し、小売りに力を入れ始めました。魚の美味しさとともに街の元気を、直接伝えられることに気づいたからだそうです。