柳生和紙
昔はそばを流れる名取川から引いた堀の水で、紙を漉く家が200軒もあったそうですが、現在は86歳のふみえさんと90歳の平治さんご夫妻が経営するこの工房だけになってしまいました。柳生和紙は、仙台市内の和菓子店「売茶翁」の包装紙に使われる和紙を、3年前にやめるまで50年間も提供し続けてきたそうです。今や、その技術は世界中から認められるようになりました。
娘さんのおかげもあって、インターネットで注文が入るようになり、イタリアで販売される高級チョコレートの化粧箱の仕事などもこなしています。その他にも、サン・ファン・バウティスタ号模型の帆の部分に柳生和紙が使われているなど、さまざま用途に色とりどりに染められた和紙が使われています。その実力は日本の伝統和紙のすごさを、あらためて思い知らせてくれます。
昔は、3時になると起きて漉いていたということですが、最近は腰が痛いこともあって、始めるのは8時半ごろだそうですが、「寒い冬場の水仕事だけど、昔も今も、あかぎれだとかしもやけで困ることはないねえ。長く仕事してきて丈夫になってんのかね。」とふみえさん。一口に伝統というが、ただ受け継ぐだけではなく、時代とともに変ることなのでしょう。