蝶の恩返し
たしか7月の末のことだったと記憶していますが、その日も曇りで、家内は洗濯物を外に出したり取り込んだりしていました。その時、ふと目に入ったのがアゲハ蝶の羽根が開く直前の様子でした。それは理髪店のサインポールのように、ねじれた状態でしたが、よく見ると薄緑の羽根に黒い線が入った鮮やかな模様だったので、携帯のカメラに収めました。
そのことをムサシに話すと、また雨が降るかもしれないので、どこか雨の当たらない場所に移したらどうかというのです。そこで、少しだけ移動して様子を見ることにしましたが、しばらくすると、そこにはもはやアゲハ蝶の姿はありませんでした。少しは心配だったのですが、姿がないということは、無事に飛び立ったのだろうと考えることにしました。
そんなアゲハ蝶のことが、記憶から消えつつあったある日のこと、仕事が一段落したので、遅い昼食をとっていたところ、窓の外で何かひらひらするものを感じました。その正体は、あのアゲハ蝶の雄姿だったのです。その色柄はあの時のままなので、すぐに気がつきました。そして、その様子は、まるで家内とムサシにお礼を言っているように見えました。その後も毎日のように現れ、目の保養をさせてくれています。