志ほが満(しおがま)
JR仙石線の本塩釜駅から鹽竃神社に向かう途中、木造造で門前町の風情が漂う「丹六園」があります。茶と菓子を商うこの老舗は、享保5年(1720年)に廻船問屋として創業し、明治時代以降、肥料問屋や茶商などに転業しました。戦後は江戸期につくられた伝統菓子を復元し、塩釜の藻塩を模した銘菓「志ほが満」の製造を始め今日に至っています。
さらさらとした上質のもち米で造られた「志ほが満」は、正しく塩釜の藻塩を彷彿とさせる逸品で塩釜の名物です。一昨年の東日本大震災の際には、売り場は津波にみまわれましたが、数年前に補強したばかりの建物は無事でした。美味しいものを少しでも早く復活させて欲しいと、お客さんが水や食料、灯油などを遠くから持って来てくれたそうです。
現在の当主である十一代目の丹野六衛門さんは、震災で1年休止となり、その後再開した観桜茶会の世話人をつとめています。また、先代は昭和の半ばに枯渇した鹽竃桜の復活に尽力し、その活動が昭和62年の天然記念物指定にも繋がった。その思いが、きめ細かで鮮やかな鹽竃桜のレリーフや紫蘇の香り、ほどよい口溶の「志ほが満」に込められています。