天総山 林香院(若林区新寺)
山門前に並ぶのは干支のお地蔵様。仙台駅から遠くないにもかかわらず、静かな凛とした空気が漂うのは新寺にある天総山林香院です。聖域に踏み入れると、心がスッと落ち着きました。こちらの寺院は黒川城(会津若松)、米沢、岩手山と伊達政宗公に仕えた僧侶が、1601年の仙台開府と同時に開山したのが始まりで、そのときにはすでに弁材天が祀られていたと伝えられています。この弁才天は秘仏として普段は拝めないものの、毎年1月1日から3日(正午まで)と11月23日の例祭のときにだけ開帳され、お参りすることができます。
また、本堂前の弁天堂には、いつでも参拝できる小さくも美しい弁才天が祀られています。一般的な弁才天は二本の腕(二臂)で琵琶を弾くイメージが強いですが、さすがは奥州仙臺七福神の一柱といいましょうか、やはり林香院の弁才天はちょっと違いました。琵琶の二臂弁才天は、密教で説かれるところの妙音楽天と呼ばれるお姿。いわゆる技芸の神様の側面を表すのですが、対して林香院の女神は8本の腕に宝剣や独鈷など武器を持つ八臂弁材天の姿をされています。
これは仏教典のひとつ「金光明最勝王経」(以下、金光明経)の弁材天のお姿そのもので、手に持った武器で敵を打ち払い人々を救う側面を表しています。ではその敵とは一体? それは人間の煩悩です。手にした武器はすべて煩悩を滅ぼすための武器であり、全てを打ち払った後は、胸の前に掲げる宝珠で人々の願いを叶えてくれるでしょう。また、金光明経にはこの経を授持する者を守護し、「大智慧」を授けることも書かれています。煩悩を払って良き智慧を授け、技芸の上達までサポートしてくださるしなやかな強さをお持ちの女神に、そっと手を合わせます。世が平和でありますよう、願いを見めて。