喜傳山 秀林寺(2) (青葉区北山)
また、秀林寺の大黒天は先に書いたように三面。向かって右側には弁財天のお顔があり二本の腕に、鎌と剣を持っています。鎌は収穫である刈り取る(=勝ち取る)役目を果たし、鍵は高い壁にぶつかったときにそれを乗り越え、扉を開けるための役割があるそうです。弁財天は技芸の象徴ですから、納得です。左側には毘沙門天のお顔があり、その二本の腕には三叉槍と宝棒がありました。槍の戦端が三つ分かれているのは、仏教で克服すべき3つの煩悩{貧(さぼること、貪欲に欲すること)・瞋(感情の抑制が効かないこと)・癡(無知であること)}を表しているから。それを打ち砕く役目が槍で、宝棒は敵を打ち据えて自由を勝ち取る役割があるといいます。
これほどパワフルな神様はなかなかお目にかかれるものではないと、感じてしまいました。そうなると気になるのは、やはりお参りする上での心構え。住職が大切なことをお話ししてくれました。一つは【誓願】といって、神仏に誓いと願いを立てること。その行為により「神仏に嘘をついてはいけない。宣言した以上は一生懸命に頑張ろう」と、自分自身を後押しすることが大事といいます。二つ目は何事もとにかく行動に移すこと。「頭燃を救う」という表現をされましたが、まさに頭髪が燃えているときにあれこれ考えている暇はありません。必死に火を消そうとすること(行動すること)で技術は身についていく。そうすることができると大黒天のご加護が得られますよ、と。
「ふふふ、お互い髪はありませんけどね」と、少し緊張していたこちらを笑わせてくれたユーモアある住職に親近感が湧き、さまざまなことを学んだと感じた一日であった。そして最後におもしろい話を聞かせてくれました。「大黒天様は米俵に乗っているでしょう? そのお米は『田』からできますね。だから大黒天は『た(田)から』のもの。つまり、「宝物」を授けてくださるんですよ」。悪い物には容赦なく、そして人々には優しい愛情を注いでくれる大黒天。新たな道を切り開いた時は、迷わず【誓願】を立てに伺ってみましょう。