Antiques Occi(2)(富谷市富谷)
開門と同時に装具のヘッドランプを頼りにダッシュし、品々を目利きするのだという。「あとはディラーを訪ねたり、『Antiques』の看板があるショップにふらりと立ち寄ったり」。イギリスにこだわる理由を尋ねると、「英国家具を修復する魅力にはまったんです」と菊地さん。はじめは当時少なかった北欧系の家具屋を目指した。修行のために勤めたのが、たまたまイギリスアンティーク店。普通の家具とは異なる、年代物の多種多様の不具合と向き合うことになった。その都度考え、工夫しなければならず、それは自身へのチャレンジでもある。これに手ごたえを得、進路変更を決めたそうだ。「修理で家具を触っていると、大昔のものなのに、とても近い存在になってきます」。
長く多くの人の手に触れられ、伝え継がれ、残されたものが、今ここで息を吹き返す。愛着が湧いてこないわけがない。ウィザーチェアに座らせてもらった。現物は約100年前のものだが、原型デザインは1600年代からあるという。頑丈で大ぶりな見かけとは裏腹に、体に優しくフィットして居心地が良く、何時間でも読書ができそうだ。「買い手が決まったら、微妙なガタツキを直し、ワックスで仕上納品します」。この状態からさらに安定感や美しさが増すと聞くと、やはり小道具の奥深さにうなずくばかり。繊細なガラス、手描きの皿、愛くるしい人形、優雅な銀食器、小物類も彩り豊か。「100年前の職人さんも、会えば人間的には今と変わらないでしょう」と菊地さん。「ただ昔は限られた情報と材料の中で、自然素材を工夫しながら長く時間をかけていた。
その分、物に込められた魂は尊いですよね」。開業から数年は、妻のゆかりさんと2人で買い付けに出かけたが、家族が増えてからは単身出張が続く。「趣味嗜好はほとんど一緒ですが、今の品揃えは少しだけメンズ色が濃いかもしれなせん」と笑う。「でも、納得したものだけをご購入くださいという店の方針は変わらないですから」と、ゆかりさんが言葉を添える。「私は単なる"仲介役"。お客様とイギリス小道具店の橋渡しをするだけです」と菊地さん。来店客が探し物をやっと見つけたり、逆に一目惚れという運命的な出会いがあったり。その瞬間が最高ですね。今後もアンティークファンが増えるよう頑張っていきます」と締めくくった。