Antiques Occi(1)(富谷市富谷)
国道4号線から駐車場に入った奥、イギリス国旗が目印の大型店だ。エントランス周りから多くの古い道具が並び、オールドヨーロッパの郷愁が漂う。風格ある扉を開けると、大小のアンティークアイテムが視界いっぱいに飛び込んできた。天井から吊るされたランプ、テーブル、キャビネット、陶磁器、置物......。オブジェクトのように壁に取り付けられた椅子も、見事に店の空気に溶け込んでいる。「お客様と古い道具の出会いがより楽しくなればと、あえて整然とせず、ユニークな展示を工夫しました」。2014年にオープンしたこの店、ヴィクトリア時代でも1860~70年代以降の貴族層、1900年代の一般庶民が使用していた生活道具全般を扱う。
小さな銀食器なども数えれば、総数は軽く1万点を超える。「私自身が好きなので、買い付けているとつい多くなってしまう(笑)。でもどれも、普通の生活の中で使ってほしいものばかりです」。子どもの頃から道具やインテリアに興味があったという菊地さん。高校時代には倉庫から祖父の古い愛用品を持ち出し、部屋にコーディネートしてご満悦だったとか。中ほどに、豪華なステンドグラスの扉を発見。上部にアーチ状の明り取りも付くもので、ここまで大きな家具は、他にはないかもしれませんね」。1800年代後期、宮殿のような建物で、庭に出るための扉として使われたらしい。古い洋画の美しいシーンが甦る。
近くに置いてある見慣れない大型家具が、教会で使われていた説教台と聞いてまた驚いた。敬虔な牧師さん、着飾った紳士淑女たち......、ふとタイムトンネルをさまよう気分だ。「どれも昔の職人さんがつくり、昔の英国人が使っていたもの。そのストーリー性にも高揚します。大事に受け継いでいきたいですよね」。菊池さんによれば、欧米では古い建物を活用し、受け継いだ物と新しいものを自由な発想で使い続けるという。コロナ禍で控えているが、通常は年2回、イギリスに買い付けに出向く。「競馬場が会場となるアンティークフェアは、朝の暗いうちから行列ができます」。