蕎麦カフェ 田伝(大崎市鳴子温泉)
国道47号線を北上し、鳴子温泉の手前の道路沿い。のどかな田園地帯にある、ひときわお洒落な外観の店だ。この地で代々農業を営む中鉢さん一家が、生産・加工・販売まで、六次産業化の一環として5年前にオープンさせた。明るい店に入ると、奥の窓からは広大なそば畑が眺められる。「夏そばと秋そば、あわせて30町歩ほどをつくっています」と、中鉢けい子店長。夏にいち早く収穫するので、新そばを楽しむ期間も早まる訳だ。この無農薬栽培の玄そばを、殻ごと挽いた黒、脱皮して挽く白の2種類に自社製粉し、手打ち型製麺機を使い二八の割合で打つ。水回しは、飲む鳴子温泉水という。彩豊かな「鳴子づくしセット」運ばれてきた。
早速、白そばをそのまま数本すすってみると、香りがす-と立って鼻に抜け、にんまり。一方の黒はというと、食感がもっちり。白ともどもコシがしっかりしていてそれぞれに美味しい。つゆは地元の醤油を吟味した返しと鰹ベースの出し汁を使い、風味もバランスもいい。「最後、そば湯で飲み干せるよう、優しい味にしています」とのことだ。季節の野菜天や温泉卵、デザートなど、工夫を凝らしたメニューはまさにうれしい地物三昧。黒の太打ちもあると聞き、試食させていただいた。出されたそばは幅が5mmもあるものの、平打ち麺で食べやすく、噛むほどにいい香りがしてくる。そして、蕎麦カフェならではのガレットも評判。
岩出山産の有精卵とベーコン、自家製のくるみ豆などがのる「おまかせガレット」は、ふわふわのそば生地につられ、つい食が進む。フルーツたっぷりスイーツガレットも、甘みが控えめなせいか、"別腹"にすっぽりと収まってしまった。多彩なメニューを考案し、自ら調理する中鉢店長は「子育て中にたくさん作りましたから。手作りは安全・安心ですしね」と屈託がない。家族企業の社長である夫と長男が主に生産部門、取締役でもある店長と三男が加工・カフェ部門を担当。そば粉を使ったシフォンケーキをはじめ、そば粉クッキーやチーズケーキも定評がある。店の片隅には鳴子こけしが飾られ、ちょっとしたお土産コーナーも。さあ、大崎耕土・鳴子の豊かさにひたろう。足を伸ばしてでも出かけたいスポットだ。