竹駒神社
宮城県南部の海辺に位置する岩沼市は、海洋の影響で冬でも比較的暖かく、過ごしやすい。中部の岩沼町、太平洋側の玉浦町、西側山手の千貫村が合併した「岩沼町」が1971年に市制施行、今年で節目の50周年となる。歴史を辿ると江戸時代から、内陸の奥州街道(現国道4号線)と海岸沿いの陸前浜街道(国道6号線)の結節点で交通の要所であり、参勤交代などに利用された宿場町、岩沼要害の城下町、竹駒神社の門前町でもあった。明治になると、鉄道が開通し岩沼駅も開業。昭和の戦後には、名取市にまたがる仙台空港が東北初の国際空港として整備され、5年前の民営化を経て施設はさらに拡充。
陸・空ともに物資の集散や人の往来が活発化した。岩沼を巡るにはまず、市中心部にある竹駒神社を訪れよう。「たけこまさま」と慕われる信仰と観光の拠点だ。京都・伏見稲荷、茨城・笠間稲荷とともに「日本3稲荷」の一つに数えられる。平安時代の842年、歌人でも知られる小野篁が国司として陸前国に赴任する際、陸奥の守り神として創建したと伝わる。朱色の大鳥居から参道を進むと、彫刻が見事な桜門(髄身門)向唐門が続き、豪華な本殿・拝殿に至る。江戸期に建立された本殿は1990年に火災で焼失、3年後に再建された。
拝殿に設けられた地下通路を通って、奥宮や命婦社を参拝できる。出雲神社、秋葉神社など全国の著名神社の境内社が七社揃うのも見逃せない。同神社の最大の行事は、旧暦2月最初の午の日から1週間続く初午大祭。岩沼は江戸期から馬の集散地として知られ、境内で馬市も盛大に開かれたという。期間中は伊達家の大名行列が起源の伝統の竹駒奴が先頭をつとめる神輿巡幸や、全国各地の自慢のお菓子が展示される全国銘菓奉献祭などでにぎわう。コロナ禍のための神事以外は2年続きで中止されたが、多くの市民が復活を心待ちにしている。