千年希望の丘
足を海辺に転じてみよう。岩沼で忘れてならないのは2011年の東日本大震災と復興の歩みだ。震災では市域の48%が津波で浸水し大きな被害を受けた。注目されたのはその後の復興ぶりで、仮設住宅や集団移転団地のいち早い建設や、約10㎞に及ぶ海岸線に設けた「多重防御」施設など、迅速できめ細かい取り組みが復興の「トップランナー」と呼ばれた。そのシンボルが「千年希望の丘」だ。
津波で流された沿岸の6つの集落跡を、千年を見据えて「防災公園」化。市の震災死慰霊碑もある空港近くの相野釜地区を北端に、震災ガレキも活用した高さ8~10mの丘を12基造成し、もともとあった2つの丘と合わせて14基の避難丘を整備。普段は太平洋を眼下に臨む格好の展望台として親しまれているが、有事は緊急資材を備える避難所になる。丘と丘の間はシイ、カシ、タブノキなど常緑広葉樹を主にした「森の防潮堤」の園路でつないでいる。
2013年から始めた園路造りの植樹祭には全国のボランティアが駆けつけ、参加者延べ4万人が計約20種類35万本を植えた。今、木々の高さ5mほどまでに成長、自然の驚異に立ち向かう自然の防潮堤の姿がたくましい。この「千年希望の丘」をはさみ、海岸のコンクリート防潮堤、内陸側で改修した貞山運河、新設のかさ上げ道路のセットが、岩沼独自方式の4重の多重防御だ。