SOBA to GALETTE あづみの
秋保の温泉街近く、昨年の9月にオープンした人気の店だ。道路から入って駐車場から見ると、大きな構えの店にびっくり。さらに店内に入り、お洒落な雰囲気にまた驚かされるものの、何とも落ち着ける空間だ。店の看板は、全国に名を馳せる「"信州戸隠そば"。「信州2号という品種を使っていますが、豊かな香りが特徴です」と小松店主。信州長野でも戸隠地方は水が良く、根源の深い霧の下で育ったものは"霧下そば"と呼ばれ、別格の品質なのだとか。戸隠伝統の"ぼっち盛り"という盛付も、東北ではなかなか見られない。二八の割合で毎日手打ちにするそばは、艶やかな光沢がある細麺だ。手繰ってみると、確かに香りが強い上、のど越しもコシもほどよい。
3種の鰹節を使う出汁と、1週間寝かせる返しを合わせた汁は、奥深い中に甘みがあり、そばをすくう箸もするすると進む。同じ戸隠産のそば粉を使う、もう一つの定番メニューが"そばガレット"。薄く焼いた生地で具材を包んで食べる、フランス・ブルゴーニュ地方の郷土料理で、おすすめの「ガレットコンブレット」をいただいた。半熟卵を崩しながら隠れている食材と出逢い、絶妙な味わいにうっとり。たっぷり溶けたチーズ、漢方牛ベーコンの燻製の香り......。一食分としても、そば以上のボリュームだろう。そしてこの店は、秋保の自然散策や温泉を楽しむ合間にティータイムを過ごす客も多い。オリジナルブレンドコーヒーとスイーツ系ガレットの相性も最高だ。
築30年以上になる自らリノベーションしたという店内。古いミシンの脚を利用したテーブル席、古い梁にアンティークな照明......。改めて見回しても、優しく柔らかい空気が流れるのがわかる。「小さい頃通った、田舎のおばあちゃん家のような、懐かしい雰囲気にしたかったんです」と店主。実際この秋保地区には今も祖母の実家があるというから、この自然な解放感も本物なのだろう。10年以上前、仙台市中心部の同名の店を訪れたことがあった。聞けば当時の店主が実父だそうで、なるほど戸隠そばだし、多彩なアレンジメニューも魅力だった。そして今、継承した味がさらに磨かれている。美味しいそばが繋ぐ縁に、感謝。