温泉大好き人間
お母ちゃんが温泉大好き人間であることは、たびたび申し上げてきました。しかし、それがどうしてなのかはよくわかりません。もっとも、温泉がどうして好きかなどという質問は、やぼな話しかもしれません。日本人ならほとんどの人は温泉が好きだからです。でも、お母ちゃんの温泉好きは尋常ではなく、温泉と聞いただけで顔色が変わります。わが家では、この季節になると、お正月の過ごし方が話題になり、"今年はどこに行く"という話で盛り上がります。オヤジも渋々とではありますが色々な考えを出します。それというのも、これまでさんざんな目に合ってきたという学習から、温泉選びに参加するようになったのです。第一オヤジは、日本人には珍しく、温泉がそれほど好きではなく、特にお正月ぐらいはのんびり家で過ごしたいと願っている人なのです。そんなわけで、以前は、こうした話には消極的で、できればホテルの予約が取れなければいいとひそかに願っていましたが、いざそうした事実(ホテルの予約が取れない)とき、その時は納得したような顔をしていますが、お正月がくると、オヤジに八つ当たりします。
ときには、お父さんが、温泉嫌いないので、遠慮しているうちに予約の時期を逃してしまった。つまらないお正月だ! と嘆き、しまいにはどこでもいいから泊まりに行きたいと言い出す始末。それがこの世の終わりのような嘆きぶりで、オヤジもいて堪らなくなり、あちこちのホテルに電話をかけまくり、空いているホテルを探す羽目になる。何とかホテルが見つかると、これがまたべらぼうに高く、往復ビンタのように弱った心に突き刺さる。こんな苦い経験があったので、今は、顔面の半分を引きつらせながら、表面上は楽しそうにホテルの予約サイトをクリックしているが、嫌いなものが好きになったわけではない。一方のお母ちゃんはというと、思い通りの温泉、思い通りの部屋が予約できたとなると、まるで恵比寿様が砂糖をなめているような超恵比寿顔になり、なんとなく、今晩のおかずの豪華さが目に浮かぶようです。存命のときは、ボクもお相伴に預かったので、結構波及効果はあったかもしれない。でも、最近は、オヤジの温泉嫌いとお母ちゃんの温泉好きは少し意味が変わってきたような気がします。
お母ちゃんは、温泉の雰囲気やお風呂、食事といった基本的な機能は昔から好きでしたがし、それは今でも変わらないと思います。しかし、昔と違うのは、家から離れることで解放感を味わうというのが大きな目的になってきたようです。それに、車を運転するのが大好きですから、これもまた楽しみの一つなのでしょう。一方オヤジの温泉嫌はいいよいよひどくなり、ホテルからこっそり抜け出し、家のお風呂に入りたいというのが本音のようです。もっともお風呂自体が嫌いなのではなく、転倒したりすると周りの人にも迷惑をかけるというのが昔と違うところです。先日、久しぶりに本格的な都市型ホテルに一泊しました。そこは、欧米人向けの本格派ホテルでしたので、お風呂の浴槽も超大型で、湯舟に浸かっている分には王様の気分が味わえるのですが、いざ、立ちあがろうとしたとき、どうしても立ち上がれないのです。足のほうに傾斜していて、しかもツルツル滑る。その上、脇の手すりは長身の欧米人に合わせて、かなり上側ついているので、そこに手をかけて立ち上がることができません。温泉とかホテルと聞くと鳥肌が立つといっています。