そば処 土里夢(どりーむ)
広大な田園地帯、小さな看板から少し登った丘にある「もぎたてフルーツ工房土里夢」。今年の春、手打ちのそば処がオーブしたと聞いて駆けつけた。生産組合の土里夢は、5年前からシャーベットの加工・販売を行っている話題のスポットだ。「この自然の中で、食事が出来たら最高!」とお客様から声が上がり、そば処の開店に至ったという。市内花山産のそばを厳選し、二八の割合で手打ちにしたそばは、細目でもっちりとした弾力があり、噛むほどに香りが広がる。甘味とうま味にこだわったというそば汁は、昆布と3種の節から出し汁を取り、湯煎を2回することでマイルドな仕上がり。そばと一緒にすすれば、ほーっと気持ちが和む。
「花山産は保存管理がいいから、そばが緑色がかっていて風味もいいでしょう?」と果樹農家であり、修行してそば職人にもなった熊谷和幸さんは説明する。天ぷらの材料がふんだんなのと、その個性的なネーミングにも注意したい。ミョーガ、エゴマはわかるが、まんずなる、おばキュー、ピチピチ天とは? 聞けば、まんずなるは「まんず、成るんだね」、実在するササギの多収品種名だそうだ。おばキューは、大葉の味噌とキュウリを合わせて天ぷらにしたもの。ピチピチ天はなんと桃の果肉の天ぷらで、食べてみると適度な歯応えが残り、油との相性が良く美味しい。「旬の素材をいかし、工夫をしています。驚きと感動を味わってください!(笑)」とは、工場長の渡辺信夫さん。
畑で作る野菜や果物以外に、里山の恵みも豊富。これからの季節は、きのこそばや鶏そばにも期待してほしいとのことだ。デザートに干し柿のシャーベットをいただいた。舌の上を滑りながら、濃厚な柿の風味が溶けていく。生クリームや卵を使わず、素材をぎゅっと詰め込んだ味わいだ。この地ならではのガマズミ、ナツハゼなど季節限定品も含め、シャーベットは25種類にのぼるという。通販サイトも要チェック。季節が良ければ、野外のテーブルでゆったりするのもいい。「緑しかない環境。運が良ければカモシカや狸にも遭えますよ」と、生産組合長の熊谷道雄さん。広場は年に数回、収穫祭やコンサートが催されて盛り上がるそうだ。初めて訪れるのに、懐かしく温かい故郷......。また来よう。