山本いちごワイナリー
東北有数のイチゴの生産地として知られる山元町。「山本いちご農園」は東日本大震災から3ヵ月後、代表の岩佐隆さんを中心に、地元イチゴ農家3軒が集まって立ち上げた。町内にはかつてブドウを使ったワイナリーがあったが、震災の津波被害を受けて廃業。岩佐さんは「ワイナリーの復活は、農園を立ち上げた頃からの夢。イチゴ農家ならではのイチゴを使ったワインを造りたかった」と話す。2016年10月、待望のワイナリーが誕生した。コンセプトは、香料や着色料を使わない「真実のいちごワイン」。
自社で栽培している宮城県オリジナル品種「もういっこ」をはじめ、「とつおとめ」「紅ほっぺ」の3種のイチゴを原料に、ブレンドして使用している。原料だけでなく、製造も自社で手掛ける。ワイナリースタッフの今野萌絵さんは「ブドウは寝かせることで味に深みが出ることもあるが、イチゴは何よりフレッシュさが大切。熟成させないのが特徴です。完熟のイチゴを厳選し、イチゴ本来の甘さと香りが楽しめるワインに仕上げています」と語る。
ワインの醸造風景はガラス越しに見学でき、パネル展示で工程を紹介している。イチゴワインは現在3種を醸造。「苺夢(べりーむ)」は芳醇なイチゴの香りと、爽やかな甘さが口いっぱいに広がるスパークリングワイン。「愛苺(まないちご)」は甘さと酸味のバランスが良い。「苺香(いちかおり)」はアルコール度数が5ないし7%と低く、すっきりとした飲み口が特徴だ。今後は、普通の倍以上のイチゴを使用したワンランク上の「プレステージワイン」もデビューする。イチゴ農家だからこそできるいちごワインを求めて、県内外から訪れるファンも多い。