秋保ワイナリー
仙台の奥座敷・秋保温泉。覗橋にほど近い南向きの斜面にブドウ畑が広がり、畑に囲まれるようにして、落ち着いた外観のワイナリーの建物がある。併設のショップには、ワインだけでなく、三陸の魚介類を使った加工食品などが並び、家族連れや旅行者が訪れる。2014年3月に宮城県で当時唯一のワイナリーとして設立され、翌年9月から醸造を始めた仙台秋保醸造所。現在、2.1haの畑でメルローやピノグリなど15品種のワイン用ブドウを栽培している。山梨県や東北各地で生産されたブドウを原料にしたワインや、亘理、仙台根白石、南三陸、加美で採れたリンゴを使ったシールドを製造・販売。
一昨年は3万5千本を生産、去年は5万本と順調に実績を積み重ねている。2016年秋には、自社農園で初収穫したブドウを原料にしたワインの生産も始まった。「まだ収穫量が少ないため、関係者の手元にしか届けられませんでしたが、今年は一般向けに販売したいですね」と代表取締役の毛利親房さん。記念すべきワインを味わった関係者からの評判は上々という。栽培や醸造について学んだり意見交換したりできる研修施設としての機能も本格化させるという。「2020年までに県内のワイナリーは5軒になる見込みです。お互いに学び、悩みを話せる場が必要。
これとは別に、宮城県ワイン協会を立ち上げて農家や飲食店、酒販店、行政などと連携してワイン文化を広げる活動を展開します」。そんな毛利さんが描くワイナリー像は、生産者と消費者、レストラン、観光関連産業などとつなぎ、地域活性化の媒介役となることだ。「宮城は三陸沖という世界に誇る漁場がある。ワインには、食や観光など地域の可能性を広げる役割が担えると思います」。ワイナリーとレストラン、生産者がコラボしてワインとそれに合う料理を提案するイベントや、ワイナリーや特産のカキ養殖などの現場を見学し、県内の温泉などに泊まる旅行ツアー...。そのアイデアは尽きない。