ハニーローズなんごう&手作り工房ミントティ
宮城県の北東部、大崎平野に位置する美里町。奥羽山脈の栄養分を運ぶ鳴瀬川が、肥沃な大地を形成している。そのため、米や野菜、果樹などの栽培が盛んだ。その美里町は、東北有数のバラの産地でもある。「有限会社ハニーローズなんごう」は、年間約200万本を生産。「てづくり工房ミントティ」は、そのバラを使って染色している。作業場に入ると花特有のみずみずしく甘い香りが漂う。視界には、色とりどりの大量のバラが選別され、アレンジメントされていく様子が広がっていた。新鮮なバラが一堂に会す景色は、まさにバラ天国だ。花好きの人だったら、感涙にむせんでしまうかもしれない。特筆すべきは、バラの鮮度と値段。驚くほど良心的な価格で提供されていて、小売りはもちろん、企業からの大量注文やリピートも多いそうだ。
この見事なバラを生産しているのは「有限会社ハニーローズなんごう」。バラ生産者4名が出資して、平成10年11月に農業生産法人として誕生した。バラはハウス内で水耕栽培されており、その面積は20,808㎡。大輪系や中輪系、スプレー系など、合わせて約40種類もの品種がそろっている。代表取締役の佐々木正俊さんは「この時間のハウスの中は、ほとんど花は咲いていない」と言いつつも「手作り工房ミントティ」の忽那香菜子さんとともに、ハウスを案内してくだった。確かに、ハウス内には咲いているバラはあまりなかったが、つぼみは随所にあった。品種ごとにプレートがあって、特徴が説明されている。佐々木社長は「一本一本、大事に育てています。産地直送なので花持ちがよいのが特徴です。お客様からお喜びの声をいただくこともあって、手ごたえを感じています」と話していた。
バラ染をしている忽那さんは、茎の長さが不足している規格外(摘花)を、安価で提供してもらっています。「『きれいな染め物になろうね』『色、ちょうだいね』と語りかけながら摘んでします」と忽那さん。摘花はバラ染め以外には、結婚式などに使うフラワー用に販売されている。この町でバラ染が始まったのは平成20年ごろ。小牛田農林高校の先生と生徒たちが研究開発した。バラのアントシアンという色素は熱に弱いため、煮て色を付けることができない。そのため大量のバラが必要だ。美里町はバラ生産地ということもあり、摘花もたっぷりあるので、この研究に取り組むことができた。小牛田農林の先生や生徒たちは、町の人々にバラ染めの講習会を開いた。忽那さんら数人も、生徒たちの指導をしていた先生から、バラ染めを何回か教えてもらった。その後、バラ染めが生徒の卒業や先生の転勤で消えてしまいそうになった。忽那さんは、小牛田農林高校の校長先生に「引き継ぎたい」と申し出て、了解を得て続けてきた。
バラ染めに使う品種は、赤系・大輪系のローテローゼ、もしくはサムライ。布は絹のみ。木綿などは色が入らないそうだ。絹でも、糸の種類や厚さ、加工によって、染め上がった状態が違う。また、バラ染めの液は何回も使うことができ、そのたびに色味が変わる。最初は濃いローズ色で、次に使うときはピンクに染まる。別の溶剤を入れればオレンジ色も可能だ。色があせた布を染め直すこともできる。「思った通りの色を出すのは難しいですが楽しいです」と忽那さん。下浸けや染める時間なども、いろいろ研究しているとのことだった。忽那さんは「バラの町である美里町と、ハニーローズさんのPRのお手伝いをバラ染めでできれば嬉しいです」と語っていた。バラ染めの体験講座も検討中だそうだ。心を癒し、優雅な気分をもたらしてくれる美里町のバラとバラ染めに、ぜひ触れてみてください。