歴史の道 二口街道
自然とは時に途方もないモニュメントを創りだすものです。名取川源流にそそり立つ大岩壁、盤司岩、大瀑布、この前に立つと人間の営みがなんとも小さく見えてきます。名取川を左右に見ながら進む二口街道は、わずかな平地を縫う川の道。仙台から出羽の山寺に抜ける道として知られていますが、途中秋保の温泉があり、道行く人々に安らぎをあたえたものだ。現在は東北自動車道・仙台南インターチェンジから仙台・山寺線(宮城県道・山形県道62号)に入ればよい。秋保一帯は現代の旅人にも大きな慰めをもたらしてくれることでしょう。
秋保温泉入口にある覗橋の上に出ると、眼下は清流に洗われて出現した奇岩怪岩が上下1㎞に渡って続いている。これが磊々峡。渓谷美に加え、新緑、紅葉、あるいは雪が一層の風情をたたえ、一服の日本画を思わせる景色が展開する。秋保温泉に入ると大規模な高級旅館など十数軒の旅館が立ち並ぶ。飯坂、鳴子とともに奥州三名湯に数えられ、飛鳥の昔から「名取の御湯」として知られる古湯。江戸期には伊達政宗公もしばしば湯治に訪れた。川を挟んで向かい側はアントドア派の家族やグループにぴったりのレジャースポット「秋保森林スポーツ公園」と、もみの木など自然の樹木をそのまま生かした本格的18ホールのゴルフ場「太白カントリークラブ」がある。ここではラウンド中、運がよければ国の特別天然記念物、二ホンカモシカと出会うこともできる。
さらに川を遡ると、隠れた名湯・神々根温泉。やがて秋保大滝の轟音が響いてくる。秋保大滝は、大滝不動尊境内にあり、高さ55m、名取川の全流が一気に流れ落ち、しばし言葉を失うほどの壮観さ。そばには200種、1万5000本もの草木が植えられた秋保植物園、優美なすだれ滝、釜渕などがある。二口温泉は、名取川上流にある静かな山間の温泉。ここから二口峠まで約8㎞の二口渓谷が連なり、途中にある天然記念物の姉滝が珍しい。名取川源流には、谷底からの高さ約600m、長さ約3㎞という断崖絶壁が続く盤司岩が立ちはだかる。大自然が優しく厳しく、様々な表情を見せる秋保。だからこそ現代人が自分自身を取り戻せる、貴重なリゾートといえるだろう。