古より都人の巡礼地として知られた塩竈の浦
海と社に抱かれた粋なみなとまち「塩竈」は、「見し人のけぶりとなりし ゆうべより 名もむつましき 塩竈の浦(新古今和歌集)」という紫式部の和歌が残っています。1000年以上も昔のことです。ここに詠まれているのは、都人の憧れの地、塩竈。紺碧の海と深緑の松、入り組む浦々と沖に点在する島々が織りなす天下の絶景は、遥か平安の都にまで名を馳せたことが偲ばれる。その千賀の浦を遥かに見渡す小高い丘一森山に鎮座するのが鹽竈神社。地元で「しおがまさま」と愛されるこの社は、古くから陸奥国の一之宮として絶大な信仰を集め、江戸時代には伊達家の厚い崇敬を受けた格式高い社である。
かの松尾芭蕉の「奥の細道」にも、鹽竈神社を参拝したのちに松島へ向かった旅路が綴られ、現在でも多くの初詣や七五三の参拝者が訪れ、東北各地から篤い崇敬を集めている。ここに祀られている3柱の神のうち鹽土老翁神は、人に塩づくりを教えた神で、境外末社の御釜神社では藻塩焼き神事も行われている。古よりこの港町は、鹽竈神社の神に守られ、共に栄えてきたのである。また、鹽竈神社は東北・北海道最大規模のパワースポットともいわれている。鹽竈神社の総面積は、約30㏊(9万坪)。「Koboパーク宮城」約23個分に及び、東北・北海道の神社で最大規模の広さ。
二百二段の表坂、極彩色の唐門、桃山式の拝殿が壮厳に連なり、その全空間にまるで神々が息づくかのように凛とした気配が満ちわたる。近年では東北きってのパワースポットとして注目されているほか、安産の神としても全国的に知られている。みちのくに春を告げる「帆手まつり」、満開の鹽竈桜と共に五穀豊穣を祈る「花まつり」、三大船祭りに数えられる夏の「みなと祭り」、「流鏑馬事」をはじめとする、古より守り継がれる神事は圧巻の一言。歴史と伝統を伝える様々な神事、行事が模様される。中でも、年3回のお祭りで、重さ1トンの神輿が二百二段の急な坂を下る豪快なシーン、朱色の番傘を差して境内を歩む花嫁行列の凛とした美しさは、鹽竈神社ならではのもの。