千賀の浦と浦戸諸島
1200年以上の遥か昔より、歌枕としてあまた詠まれた「千賀の浦」とは、ここ塩釜港のこと。実は日本三景・松島の二百数十の島々のうち半数以上は塩竈市に属している。塩釜港の玄関口『マリンゲート塩釜』を発着する遊覧船では、波に浸食された奇岩と潮風に吹き曲げられた松林の佳景を、飛び交うカモメの群れと共に満喫できる。さらにのんびりと島時間にひたりたいなら、『塩竈市営汽船』で約30分の浦戸諸島へ。
桂島、野々島、寒風沢島、朴島の4島からなる浦戸諸島は400人ほどが住む有人島。潮騒に包まれたのどかな集落には、歴史と自然に培われた静かな暮らしが息づいている。海水浴、釣り、地引網体験、島巡りハイキングなど季節ごとの海の醍醐味を味わったり、四季の花々や謎めいた史跡を訪ね歩いたり。島内に点在する民宿やペンションに宿泊して羽を伸ばすのもお薦めです。また、塩釜港は東北最大の釣り船の基地として知られる釣りの聖地でもある。ボートの免許取得や、高度な釣りテクニックをプロから学ぶこともできる。
そして、塩竈といえば、美味しい魚、美味しい酒です。仙台藩の主要な港町、鹽竈神社の門前町として伊達家の厚い恩恵を受けながら繁栄した塩竈。また、遊里も黙認された仙台藩の接客地として賑わい、独特の食文化が花開いた。華やかな仕出し料理に、旅人をもてなすおもてなしの心、職人たちの丹精なものづくり。その伝統は今も連綿とこの地に根づいている。奥州一の観光地と、鹽竈神社の御神酒づくりの2つの要因から酒造業も発展。「阿部勘酒造」「浦霞醸造元・佐浦」「一ノ蔵」「麹屋酒造店」など、地酒ブームを牽引する町としても知られている。
さらに、日本一の生鮮マグロの水揚げ港、塩竈でぜひとも食べたいてのが「三陸塩竈ひがしもの」。9月から12月にかけて塩釜港に揚がる生メバチマグロの中でも、塩竈が誇る日本一の目利き人が認める最高級のものに称号が与えられるマグロの王様だ。「塩竈前」の寿司や仲卸市場にしか出回らないため、幻の味を求め訪れる食通も多い。また、今月には新魚市場がオープンし、館内では新鮮な海の幸を気軽に味わうこともできる。塩釜の新しい名所として注目されている。