サンマのきがき
気仙沼・本吉地方では昔からカツオの魚群が沿岸近くまで回遊し、大量に水揚げされました。大抵は塩ガツオとして流通されましたが、カツオの漬け汁をたるに詰めて調味料として売り歩いていた業者がしましが、それで大根などを煮るととても美味しかったということです。これが「きがき」で魚しょうの一種です。
秋田のしょつるやタイのナンプラーはよく知られていますが、当時としては画期的な調味料だったのでしょう。その後、イカの塩辛や塩漬け魚をだしに大根を煮たものを「きがき」と呼び、サンマなどの鮮魚も煮るようになりました。昔は、家庭の調味料といえば、自家製のみそと塩、酢くらいだったので祝い事があれば、みそを漉した「みそだれ」を醤油の代用品にしたそうです。
明治時代になると、醤油は地方でも販売されるようになり、醸造業も発達しましたが、高価なためもっぱら祝い事や来客用でした。「サンマのきがき」はサンマの頭をおろして内臓を取り出し水洗いします。大根の皮をむき、おろして汁ごと鍋に入れ、サンマを並べて火にかける。サンマが煮えたら尾の方から手でしごいて骨から身をはずしサッと混ぜます。醤油をふりかけ、だいこんが軟らかくなるまで煮る。おろし際に斜めに切ったネギを加えて火を止めます。