わたし達の仕事は、本当にAIに奪われるのか?
2023年3月の職種別の有効求人倍率(厚生労働省)によると、最も求人倍率の高い職種は保安関係6.58、建設土木職の5.16で、社会福祉専門職3.02、サービス・接客職2.98、営業職2.06と続いています。一方、有効求人倍率の少ない職種は、クリエイーター職0.21、事務職0.51、IT系エンジニア1.54となっています。この統計結果から見えてくることは、IT化がかなり浸透し、ホワイトカラーの募集が減少していることです。しかし、その理屈でいくと、かつて、ブルドーザーやローダーなどの建設機械が導入された時期には、建設作業員などが職を失ったかというとそれほどでもない、それどころか、ご濫のようにいまだに求人倍率は高く、人員が慢性的に不足している状況下にあります。米国では、ITがサービス業を効率化している昨今、労働者はどこえ向かえばいいのかという問題が現れ、その結果ITにより仕事を奪われた旅行会社やコールセンターのスタッフが清掃員や介護士に転職する現象が起きているという(2023年7/24日本経済新聞 経済教室・生成AIと経済社会:駒沢大学 井上智洋准教授 )。
かつて、日本でもブルドーザーが導入されたとき、1台で100人以上の人員削減が実現するといわれたものだ。しかし、そんな時代よりも数倍機械化が進んだ現在でも、建設業界は相変わらずの人手不足です。でも、このことをもって生成AI恐れるに足らずと考えるのは明らかに間違いです。AIの進化によってホワイトカラーを中心とする職種は雇用に影響を受けることは間違いない。となれば、AIとうまく付き合うしかないのかもしれない。そう考えると、有効求人倍率の高いブルーカラー職種えの転職は一つのチャンスかもしれない。また、農業の企業化も促進されると捉えるべきでしょう。日本の食糧受給率はあまりに低いし、世界的に見ても、飢餓に苦しんでいる人々の多さからいっても、日本の農業の貢献が大いに期待されて然るべきです。そして、何よりも力強いことは、我々やまと民族は農耕民族で忍耐強く、体を使う労働がもともと大好きであるからです。こうして有史以前から、自然減と自然増を人間の知恵で調節しながら生き延びてきたのです。AIは人間に向けられた銃口ではなく、ちょっと行き過ぎた人間の知恵なのではないでしょうか。
だとすれば、「AIは私たちが幸せに暮らすための道具である」という本来の開発思想に立ち返り、AIの開発者は、社会に不安をまき散らすような物騒なモノではなく、豊かな暮らしを実現するための道具であることを力強く宣言してはどうでしょう。それがもし手遅れで、歯止めが効かない状況になっているのだとしたら、そんなろくでもない「AIには飯を食わせない(電気を与えない)」という最後の手段(兵糧攻を実行する権限)は、人間が握っているということを思い知らせてやることはできる。そこまでしなくても、自然環境に逆らって大目玉を食らったり、環境とうまく付き合うための工夫を凝らして、より住みよい社会を目指したりと、悪戦苦闘を繰り返しながらも、それぞれのささやかな幸せを感じながら暮らしてきたわけですから、まるで、AIによって仕事を奪われた失業者が全く行き場がなくなるなどということはあり得ないと信じます。ただし、人間はいったん住みよい環境に身を置くと、そこを守ることが使命であると勘違いし、新しいものはみな悪であると都合よく解釈する癖もあるように思います。殻に閉じこもるのは実に退屈です。