東洋軒 本店(青葉区国分町)
1931年(昭和6年)創業。仙台の地で90年以上歴史を刻んできた「東洋軒 本店」。代表で三代目の相澤さんは20代から中華の仕事に携わり、現在は県の中華飲食生活衛生同業組合の理事長も務める。激動の時代に飲食店を営んだ先代の苦労を見てきたため、引き継ごうとは考えなかった。しかし、料理を学んでみると技術が向上することがおもしろいと感じた。経営改善なども経験し、最盛期は4店舗を切り盛り。飲食業の魅力を続く世代に伝えながら、多くの人材を育成してきた。40代で体の不調を経験してからは働き方を変えた。今は本店のみを経営しながら、地域との関わりも大切に、自らも厨房で腕を振るう。
東洋軒本店料理はマイルドな味付けの広東がベース。修行先でも広東料理を学んだ。ラーメンスープはシンプルで雑味を感じない味わいで、丁寧な仕事であることが感じられる。組合の活動にも関わってきたため、通年提供する冷やし中華や話題となったマーボヤキソバなど仙台ご当地グルメにも力を入れている。鶏5、豚3の割合でとるスープは、多彩に揃える麺メニューとのバランスが取りやすい。味付けはもちろん、メニューに合わせて麺の太さ、処理を考えて、自分で最も美味しいと思える状態に仕上げる。
「エビソバ」を醤油味にしたのも「自分が美味しいと思ったら」。あんかけは塩味。醤油ベースのスープと合わせたときに調和するよう仕上ている。地域に愛される名店は懐が深い。朝4時まで営業していると、さまざまな客が訪れる。毎日のランチには主に近隣で働く人々が、夜にはつまみを頼んで一杯、締めのラーメンなど、目的はそれぞれだ。「麺硬、大盛り、野菜増し」。特注が入るとお客さんの顔が浮かぶという。温かい麺は、エビソバ含めて全16品。自分の好みの一杯を求めて、通ってほしい町中中華店だ。