薪火レストラン 禅(泉区福岡)
晩秋の泉ヶ岳の清冽な空気を胸いっぱいに吸いながら、扉を吹けると、パチパチと薪のはぜる音と香り、そしてあたたかな火が迎えてくれる。イタリアンを中心に料理の道を歩んできたオーナーの諏訪昌良さんが、昨年地元でオープンさせた「薪火レストラン 禅」では、泉ヶ岳の自然を映しだした料理を提供する。食事を通して山へ分け入り、澄んだ空気を吸いながらさらに奥へと進み、動物と出会い、異空間に心を解き放ってほしいという。
「感じ方は皆さんそれぞれ異なっても、何か気づきがあり、リフレッシュしていただければ思います」と諏訪さん。こうした話を聞くと、1日2組限定の完全予約制というのもうなずけるところだ。禅コース「仄香」をいただく。食事は、甘くさわやかな台湾茶、大地の野菜を花束にしたウェルカムブーケに始まり、滋味ゆたかな季節の野菜や肉が一皿一皿自然の趣を添えつつ供されていく。献立は日によって変わる。
その日は、薪火で3時間じっくり焼かれた石巻の鹿肉と大郷町の羊肉がメイン。やわらかくくせのないおいしさで"縄文の昔からのごちそう"と思える自然の妙味が感じられる。〆に供された大門素麺のがつんとくる煮干し味、さらにパティシエである奥さんが作る季節のデザートと、終盤にかけても美味しいさはつづく。「ここでしか食べられないもの、薪火でしか出せない味を大切しています」と諏訪さんは言う。12月は、冬の旬があらたな泉ケ岳の自然を体験させてくれることだろう。