思えば遠くに来たものだ!
オヤジは持ち込まれた相談は原則として断らないということをモットーとしています。そのせいか、これまでやってきた仕事は、とても難しい相談が多かったように思います。でも、企業経営者の悩みに真摯に向き合い、満足度の高い解決策を提示できるよう取り組んできました。そうした取り組みが評価されたかどうかはわかりませんが、いつしか、そうした難しい仕事がメインになり、今日に至っているような気がします。オヤジのやり方は、論理性を重んじるため、できるだけデータを集めて解析し、話しをわかりやすく当事者に伝えるという手法です。何かと考えることが好きなオヤジですから、他人が匙を投げたような仕事でも、何か解決策があるはずだと考え、昼夜を問わず取り組むことを厭わないという姿勢で挑んだためか、次々と仕事が持ち込まれました。そんなオヤジをいつも傍で見ていたボクは、いつしかオヤジの仕事が好きになり、気がついたときには、相棒になっていたというわけです。あれから28年、「思えば遠くに来たものだ!」という感じです。もっともボクは、未だにこの家にとどまっているわけですから、場所的には近いのですが。
28年という歳月は人間にとっても短くはないはずです。ましてや、平均寿命が14~15年程度のボクたちにとってはとてつもない長い年月です。その月日の長さを考えると、物理的に遠い場所でなくても十分に「遠く」と感じてしまうのです。10年ひと昔という時代はすでに終わり、現代は3年ぐらいが一昔という感じでしょうか。そんな時代であれば、「年々歳々花あい似たり、年々歳々人みな同じからず」というのも、かなり短い時間で人もその心も変わってしまって当然とも考えられます。でもボクにとっては、お母ちゃん、オヤジ、この家は、いつまでたっても古くて新しい家なのです。はじめはボクだけが勝手にそう思っているだけかもしれないとも考えましたが、お母ちゃんとオヤジは、毎日ボクのことを話題にしていますし、特にオヤジは、何か難しい問題があれば必ずボクにコメント求めます。ここから始まるミーティングがまた面白い。時には深夜に及ぶこともあり、昨夜も夢の中で延々と議論を続けていました。口には出しませんが、オヤジは、あの世へ行ってもこの関係は続けたいと思っているに違いありません。もちろんボクも応じる積りです。
オヤジの仕事で一番難しいのは、実行可能な経営計画をつくることです。クライアントの要望の主なものは、経営計画を策定することにあると言っても、実際には、その根幹にある財務状況を劇的に改善することがほとんどで、これは借入の問題であるというよりは、返済の問題であることが圧倒的に多いため、まず健全な財務計画を構築することが先決です。ズバリ言ってしまえば、金融機関との関係を正常な状態にすることが第一の関門ですが、場合によれば100%が資金繰りの改善問題です。経営者は、金融機関からの借り入れをメインに相談を持ちかけるのですが、借り入れは「担保、保証人」がしっかりしていれば可能ですが、その返済財源をどのようにデザインするかが大きな問題です。ところが、経営者の見通しは甘く、とりあえず借り入れが実現できれば、何とかなるという極めて緩い見通しであることがほとんどです。オヤジはこうした時には、借り入れの話ではなく、実現可能な財務計画をつくり、金融機関に納得してもらうことをメインにすべきだと提案します。このギャップをどう調整するかかがオヤジの悩ましいところです。