重苦しい雰囲気はいつ解消されるのか
ワクチンを何度打っても、これで終わりということはないせいか、それとも、荒れに荒れている世界情勢が頭から離れないためなのか、どうも晴々とした気分にはなれません。それでもボクは、お母ちゃんが供えてくれるりんごが新しくなる度に小さな幸せを感じていますが、家計を預かっているお母ちゃんは、最近の物価高は相当堪えているはずです。オヤジに今の状況をどう思っているのかきいてみたところ、しばらく沈黙した後、次のように答えてくれました。むかし(中国の戦国時代)の言葉に、「滄浪の水清まば、以て吾が纓を濯うべし。滄浪の水濁らば、以て吾が足を濯うべし」(そうろうのみずすまば、もってわがえいをあらうべし。そうろうのみずにごらば、もってわがあしをあらうべし。)。その意味は、滄浪の川の水が澄んだならば、私の冠のひもを洗うことができる。滄浪の川の水が濁ったなら、その時は足を洗うことができる。つまり、状況の変化に順応できるということだ。わが家にも、水が濁った時に洗うものは結構あるのではないか? というのがオヤジの方針のようだ。ちなみに、一番洗濯ものを抱えているのはオヤジです。
ところで、今のような経済状態になってしまったのはいったい誰のせいなのでしょうか? 2000年頃までは、一度だけ中国に抜かれたものの、日本の1人当たりGDPは10年間世界一だった。当時は、ジャパン・アズ・ナンバーワンなどと言われたり、経営は一流、政治は二流などと言われていたが、経済が落ち込むと、全てが政治のせいにされるようになったのはどうしてだろう。企業が政治に頼らなくても成長を続けてこられたのなら、失われた10年間とか20年などと揶揄されることもなかったようにも思える。でも、経営側の責任ばかりとは言えない事情があったとオヤジは言います。例えば、賃金が上がらない問題一つとっても、1980年代後半までは、一人当たりの生産性(付加価値)の伸びと、賃金の伸びが連動して上昇してきたが、1990年代に入り、一人当たりの生産性が頭打ちになったにも関わらず、賃金水準は伸びていった。これは、バブルの後遺症と少子高齢化による労働力不足という構造的な課題を経営努力ではカバーできなかったことによるものと推察されるというのです。もちろん、ITなどの技術革新の遅れも大きな原因の一つでしょう。
一方、飽食に慣れ切った国民は、企業以上に生活防衛のためのガードが甘くなり、必要とされる人材になる努力を怠り、政治を悪者にすることで鬱憤を晴らそうとしている。しかし、今の政治に過大な期待を抱くことは禁物でしょう。なぜなら、国民の不満を払しょくするには赤字国債を発行せざるを得ないし、外交面では、資源を持たざる国として八方美人にならざるを得ない。こうした構造的課題は妙案で解決できるというものではない。しかし、過大な借金をしてその場しのぎでごまかせば、そのツケは確実に子供や孫たちの負担になる。だが、そんなに悲観することはないとオヤジはいう。「世界情報社会報告書2006年板(国際電気通信連合)」によると、「IT化指数上位30カ国・地域」の中で、何と日本は韓国に次いで世界第二位の水準にあったのです。IT指数とは、携帯電話の人口比率、インターネット料金(対国民所得)比率、コンピューターを持つ家庭の比率、ブロードバンド普及率などを総合したものである。つまり、政府も企業も国民も、その気になれば経済を立て直す余地は十分あるように思えるのです。