Satoru Sato Art Museum(サトル・サトウ・アートミュージアム)(登米市中田町)
サトル・サトウ・アートミュージアムは、世界的に活躍する画家・造形作家の佐藤達さんの作品350点とパリで交流を重ねた作家やコレクターなど友人たちからの255点もの寄贈作品を収蔵している。幾何学構成的絵画を専門にしており、これほどの数が収蔵されている美術館は日本で、いや世界でも珍しいという。廃校になった校舎を改装した中に、意外性あるモダンな作品が並んでいる。佐藤さんは1945年、登米市中田町に生まれた。漫画家の石ノ森章太郎氏と同じ石森地区出身だ。東洋美術学校を卒業後、パリ国立高等美術学校に留学。
実際に見たピラミッド建築の美しさに衝撃を受け、幾何学構成的絵画に取り組むようになったという。幾何学構成的とは、直線や丸、三角、四角などのシンプルな形と色彩で゛構成される抽象的な表現。20世紀前半に北ヨーロッパの中心に起こった芸術運動で、代表的な作家にカンディンスキー(1866~1944年)やピエト・モンドリアン(1872~194年)がいる。佐藤さんもモンドリアンの影響を受け制作に励んだが次第に「日本人である自分の根っこの部分に気づかされて......」と話す。例えば神社・仏閣、茶室建築の自然と調和した配置の美しさ。故郷の何気ない田園風景の色彩。
常設展「1969~1974年展」で展示されているのはパリ留学時代のもの。おもに垂直な直線と色彩で構成された絵には、洗練されたフランスの雰囲気もあれば、凛として、しかし温かくなじみのある日本的な感覚も感じられる。現在もパリ在住ながら、もう20年以上、毎年夏に帰郷し絵画ワークショップを開催してきた。「小学生時代の、広い世界や本物の芸術に触れる体験は宝物になる」と佐藤さん。子供の自分に、故郷の大人たちが見せてくれたアートの世界に、ヨーロッパへの憧れにつながり、画家としての出発点となった。アートを介した交流は、その「恩返し」。地域の人と文化が育つ未来を想っている。