甘座 洋菓子店(青葉区立町)
なめらかで繊細な食感の薄皮が、老舗ならではの技術の高さを物語る甘座のエクレア。モカと2種類があり、どちらもカスタードクリームがベース。濃厚でありつつ、くどくない、見事な美味しさなのである。創業者の渡邊了介さんが洋菓子作りを志したとき、シュー皮は、すでに厚めと2種類が広まっていたそうだ。
了介さんの三女で工場長の渡邊靖水(きよみ)さんは「父が修行した六本木の洋菓子店のシュー皮は薄めでした。この店のために、父はさらに研究を重ねてこの薄皮を開発しました。また、祖父の店である『売茶翁』で和菓子を学んだこともあり、『おまんじゅうのように皮が薄く、クリームがぎっしり』を理想としたようです」と話す。
戦前からある売茶翁は、いわずと知れた和菓子の老舗だ。靖水さんは「父が店を始めるとき、祖父が売茶翁を超える店になるようにと『とびばいさ 甘座』と屋号をつけてくれたんです。父は、祖父の期待に応えようとすごく努力していました」となつかしそうに振り返った。先代とお母さまたちが作り上げたこの店を「変えたくない」と語る靖水さん。二代目の弟さんと、店で接客するお姉さん、そして職人やスタッフたちと、こだわりの詰まった洋菓子を守り続けている。