松島・塩釜の秋
はるか遠い昔、人々はどんな紅葉を眺めていただろうか。じっと静かに自然が織り成す芸術を楽しんでいただろうか。塩釜市の中心、一森山に鎮座する陸奥の国の守護神、鹽竈神社は欧州一の宮として名を馳せる。荘厳な空気の中、燃えるように色づいた広葉樹が赤や黄色に染めつくす佐間は圧巻。立ち止まるたびに絵になる境内をゆったり隈なく散策する。
鹽竈神社は、平安時代より東北守護・奥州一の宮として信仰を集めてきた。現在の社殿は伊達家が宝永元年(1704年)9年の歳月をかけて造営したもの。秋は多彩な紅葉と常緑樹に目を奪われ、社殿とのコントラストが見事。石段を降り、大鳥居から振り返ると、先ほどくぐり抜けた志波彦神社の門を背景に従え、頭上を覆わんばかりの紅葉が色彩を放つ。平安時代の息吹に触れ、紅葉燃える境内を探勝。鹽竈神社境内からは紅と黄色のグラデーションの向こうに千賀の浦の絶景を望むことができる。
初秋の円通院では色づき始めた樹々がかすかに風にそよぎ、雅な秋の風情を漂わせる。深まりゆく秋とともに、周りは赤や黄色に染められライトアップされた紅葉が鮮やかに闇夜に揺れる。人里離れた山や渓谷は、冴えわたる青空に逆らうように、我先に色を深めていく。時には誰の目にも触れることなく過ぎ去って行く最高の一瞬を人は追い続ける。松島・塩竈周辺には感動を呼ぶ秋の美しい風情がある。