家族みんなで号泣
先日、テレビ「坂上動物王国」で盲導犬の活躍と、引退の時の様子を見ました。こうした番組があると、いつもみんなで見るのがわが家の常ですが、今回は特に、盲導犬がボクと同じの黒いラブラドールだったせいか、特別なものがありました。訓練を受けた後、目の不自由な人に引き渡されるまで、数日、お互いの相性を確かめ合った後、正式に仕事に就くことになるのですが、いざ本番となると、なかなか呼吸が合わず、戸惑っている様子を見ると、長く勤めあげるのは難しいのかもしれないと、一瞬思ったりもしました。ご主人も相性の問題だと感じたのか、専門家に相談したところ、ご主人が盲導犬ラルフ君を信頼していないため、前に出て誘導する動作をしないのでは、というアドバイスを受け、ラルフ君を全面的に信頼し始めたら、しっかり誘導するようになったので、より一層信頼関係が深まり、本当の家族になっていきました。しかし、あっという間に月日が流れ、ラルフが盲導犬を引退する日が目前に迫りました。ラルフ君の第二の故郷は北海道(彼の誕生地)なので、フェリーの旅でゆっくりと過ごしながら、そこまで送り届けることにしました。
ラルフ君は当然、それがどんなことを意味しているのかを悟っています。その証拠にお互いの深い愛情を確かめ合うように、甘えて見せたりする姿がたまりませんでした。ご主人はその時の心情を次のように話していました。「本当は、これからラルフの代わりに来るワンちゃんと一緒に、ラルフも交えて一緒に暮らしたいのですが、そうなると、自分を頼りにしてくれないご主人に対して寂しい思いを抱くのでは? と思うと、断腸の思いでそれを諦めました」。無情にも、やがて本当に別れの時が来ました。ご主人は振り向くことさえできず、ラルフ君の残った部屋から足早に去っていきました。ドアの内側には、覚悟をしていたはずのラルフ君が、じっとドアの外に消えたご主人を一言も声を出さず見送っていました。というより、どうしてこんなことをするんだ! と心で叫んでいるようでもありました。ワンちゃんは環境適応力が強いので、その後、仲間たちと平穏な暮らしを送ってくれることと思いますが、心から納得しているとは思いません。せめて、働けなくなったので捨てられたなどと思わないで欲しいと願わずにはおられませんでした。
たぶん、坂上さんはじめ他の出演者のみなさんも同じ気持ちだったのでしょう。みんな涙を流していました。もちろん、わが家でも同じ光景でしたが、オヤジとお母ちゃんは、ラルフ君とボクを重ねてみていただけに、少し複雑だったのかもしれません。動物好きのお母ちゃんは、「ラルフ君が可愛くて、可哀そうで」という気持ちですが、オヤジは、どうしようもない事情があるにせよ、それは所詮、人間の都合であり、ワンちゃんたちの素直な気持ちに応えていないという事実は、言い訳のしょうがない。「利用するだけ利用して...」という恨み言をワンちゃんたちが言わないことをいいことにして、あまりにも身勝手な対応に憤っています。ボクはボクで、家族として一生この家で過ごし、おまけに、あちらの世界に籍を移してからも、誰はばかることなく、オヤジとお母ちゃんと暮らし続けている。それでも、正直言って、自分が特別幸せだとは感じたことはありません。それだけわが家は自然体で生きられる雰囲気であることを感謝すべきなのでしょうが、二人とも、逆にボクに感謝してくれている様子です。それを考えると、ラルフ君の献身ぶりに敬意を表するとともに、理不尽な社会システムにはオヤジ同様、憤りを感じます。