躾という名の虐待「通電首輪」
残暑はまだまだ続きそうですが、中秋の名月を過ぎると、さすがに空気がひんやりとしてきて、いよいよ秋本番という感じがします。それでも、今朝のボクは爽やかな気分にはなれません。というのは、犬の吠え癖を治すために、ワンちゃんが吠えると通電して刺激を与えるという「通電首輪」と称する商品がペットショップで売られているという記事を見たからです。しかも、今年の5月に福岡県では、これを使って実際にワンちゃんのしつけをした飼い主が虐待の疑いて逮捕されたという。この通電首輪は、数千円のものから4万円もするものまであるそうですが、売れているのでしょうか。さらに驚いたのは、プロのトレーナーも躾訓練のために使用しているということで、獣医さんによると、ワンちゃんがやけどをして、治療した経験があると言っていました。こうした行為は、明らかに虐待で許される行為ではありませんが、警察が逮捕に踏み切ったというのが救いでした。ボクたちは、元来、吠えるのが仕事ですから、それを頭から否定されてはたまったものではありません。
実はボクも、この家に来たときは、誰かが来るたびに吠えた経験があります。でも、このお客さんは別に怪しい人ではないので、吠える必要はないといわれ、その後、吠えないようにしました。もちろん、怪しい人と思えば吠えました。ワンちゃんの性格によっても違うでしょうが、よく教えてあげれば、そんな痛い目に合わせなくても、吠えなくなるはずです。要はコミュニケーションの問題ではないでしょうか。現にこの器具を使った結果、ワンちゃんが飛び上がったりするなど、びくびくしたりしておびえるようになった例もあるとのことでした。その話をオヤジにしていたら、とんでもない奴がいるもんだ! ワンちゃんの吠え癖を治すより、幼い子供にろくに食べ物も与えず、虐待したうえ命まで奪ってしまう人間や、人や車に向けてエアガンを発射する煽り運転者にきついお仕置きをする方が先だ! と、ボク以上に不機嫌になりました。最近は、山に住んでいる動物たちが里に下りてきて、農作物を食いあさる。その時は、迷惑をかける悪い奴とばかりに駆除を望む声が大きくなる。
そうかと思うと、ペットを溺愛して猫かわいがりに可愛がり、ネコちゃんやワンちゃんの自由を束縛したり、はては、先ほどの通電首輪のように、虐待までエスカレートしてしまう。これはもう動物と人間の間の単純な問題ではなく、地球環境全体のバランスの問題であるように思われてなりません。有史以来、弱肉強食の連鎖が継続され、一番強い者と自画自賛し胡坐をかいている人間にそのツケがいよいよ回ってきたということかもしれませんね。そう考えると、例え、人間の知恵で動物を追い払うことや完全服従を誓わせたとしても、この循環がもう一度廻ってくる頃には、とんでもない逆襲に合う可能性はないとは言い切れません。世の中で、人間の「驕り」より恐ろしいものはありません。何しろ、正しいから勝つのではなく、戦った結果、勝ったものが正しいというムククチャな論理がまかり通っている社会だからです。今の社会の枠組みに合わないものは、無能な者あるいは邪魔な者として排除され、あまり自己主張をしないで寝たふりをしている者がいつの間にか出世している。話がそれてしまいましたが、自分の子供や、一度飼ったペットには最後まで責任を持ち、自分の都合だけを優先する生き方はやめてもらいたいものです。