宿場町「富谷」
十の神社があったことから「十宮(とうみや)」と呼ばれていたのが、いつの間にか「とみや」に変わり、縁起のよい「富谷」と書くようになったと言われる富谷町(現在 富谷市)。熊谷にある日吉神社は、唯一現存する十の神社のうちの一つです。点在する農村集落の中にまちが生まれたのは、江戸時代のはじめで、当時開通したばかりであった奥州街道沿いに宿を開くよう仙台藩主伊達政宗の命を受け、中心となって尽力したのが内ケ崎家です。富屋新町と呼ばれたこの辺り一帯は、宿場町そして町の商店街として、車社会の発展にともない人の流れが変わる昭和の後半まで賑わいました。通り沿いのところどころに残る蔵造の店が宿場町の醸す新町。街道の中ほどにあるのが奥州街道中富谷宿です。
呉服店だった蔵造の店を往時のままの残し、古い文書などを保存展示して町の歴史を伝える役割を担っています。その数軒西には、県内で最も歴史ある酒蔵内ケ崎酒造店がどっしりとした構えを見せています。この通りは、かつてのような賑やかさはないものの、富谷の歴史を伝える貴重な遺産として注目を集めています。富谷のいいところ、すきなところはと尋ねると、多くの人が「豊かな自然が近くにあるところ」と答える。たしかに、富谷にいるといつでも空の大きさと風景の広がりが感じられ、気持ちが解放されるような気がします。利府町との境に近い丘陵部に、大亀山森公園があります。シンボルである緑の亀が見守る広場のベンチは、ぼっとしてのどかな時間を過ごしたい時にお奨めです。
道路を挟んで反対側にある展望台には標高に合わせて138mの高さに展望フロアがあります。丘を登ってさらに138段の階段と、少々頑張りが必要ですが十分報われるだけの景色がその先に待っています。田園や林の中にひっそりと佇む神社を探してみるのもいい。しんとした空気につつまれて穏やかな気分になれます。20数年前、周囲に気兼ねなく制作に取り組みたいと、県有林を背景にした一帯に工房をかまえたのは木工作家曽野繁治さん。世界に通用する木工作品がここで作られています。また、富谷の特産品といえばブルーベリー。春から夏にかけて成長の様子が眺められます。そして、収穫の時期にはつみとりの楽しみもあります。