カンケイマルラボ
復興が進む石巻の立町商店街。レンガ造りの旧観慶丸商店の建物をご存知の方も多いと思います。このレトロな建物のある一角を曲がると、観慶丸本店と「カンケイマルラボ」の建物が向い合せで目に入ってきます。1848年(嘉永元年)創業と伝えられる観慶丸本店は、今の当主で8代目、かつて水運の要衝であった石巻の千石船の船頭として、江戸に米を運んだ帰りに陶器などを買い入れ販売したのが原点です。1930年(昭和5年)に6代目が石巻初の百貨店・観慶丸商店を設立しました。その後、現在地に土地を取得して、「観慶丸本店」を開店させたという。
そんな歴史を解説してくれる須田マサキさんは9代目に当たり、ラボの運営を担っています。ギャラリー「カンケイマルラボ」のオープンは2014年です。東日本大震災の折、本店は1階が全壊したものの、2013年12月には再開し、街ににぎわいを取り戻したいとギャラリーを開設しました。元々器が大好きだったという須田さんは、「ここに来ると器が好きになり、豊かな気持ちになる。そんなギャラリーにしたいですね」と笑顔で話しています。通りに面した側とその反対側の両方がガラス張りになった空間は、爽やかな開放感に満ちています。奥にはカフェコーナーがあり、作品鑑賞や買物の合間に美味しいコーヒーも楽しめます。
壁一面を占める書棚には須田家の蔵書がずらりと並んでいます。不思議な居心地の良さがあり、つい長居してしまいそうです。本店ももた、ギャラリーのような洒落た展示で、自然に奥へ奥へと誘われる。扱っているのは陶磁器、ガラス、漆器に加え、アフリカ・アジアの手工芸品や生活雑貨など。いずれも、仕入れる人の見る目の確かさが窺える品揃えです。8代目の店主も「ここで買い物をしてギャラリーにも立ち寄ってくださる方、またその逆の方もいて、ちょうどいい感じで成り立っています。ラボでは、作品展示だけでなく、コンサートや講演会などのイベントが開催されることもあり、毎回多くの人が訪れるという。復興する石巻の街角を彩る文化空間として、欠かせない存在になっているようです。