美術館「エール蔵王 島川記念館」
蔵王の雄大な自然の中に佇む美術館「エール蔵王 島川記念館」には、ジャパンヘルスサミットの島川隆哉社長がおよそ20年かけて収集した800点以上もの作品を収蔵・展示し、そのバリエーション豊かなコレクションが多くの人を魅了しています。9月26日(日)まで開催中の「森本草介の世界」は、開館3周年を記念した特別展です。現代日本の写実絵画をけん引してきた、森本草介の初展示作品10点を含む16点を展示しています。
館長の太田勇さんに特別展と美術館の見どころを窺いました。「東北で森本展が行われるのは初めてです。もともと作品の少ない画家ですので、これだけの規模で見ることができるのは珍しいと思います。また、昨年急逝された森本先生の絶筆『未完のパンジー』もご家族からお借りすることができました。この絶筆を展示するのは、今回限りです」と話しています。モチーフを細密に描写する森本作品の中でも、特に人気が高いのが女性画です。肉感や香りまでも漂ってくるような美しさは、筆舌に尽くすことはできません。
「風景や生物ばかり描いていた森本先生は、40代の時にある女性に出会い、女性画を描くようになりました。先生は、"作品を通して、生きる喜びを伝えたい"と話していたそうですので、皆さんにもそういったものが伝わればいいですね。また、今回展示している解説文は、すべて奥様と娘さんの手によるものです。そちらにも、ぜひ注目して観賞してください。
また、常設展示では、奄美大島の自然を愛してそれをモチーフに力強い花鳥画を描いた、田中一村の作品を9月25日まで展示を延長しています。太田館長は「東北でこれだけのコレクションを見ることができるのは、当館だけです。さらに、絶筆である『富貴昌図』も展示しています。ファンの方は、幾度と足を運んでくださっています」。一村作品の向かいには、一村が日本画家で唯一尊敬していたという横山大観の作品、そしてその大観が実力を認めた速水御舟の「芙蓉」が並べられています。画家たちの人生に思いをはせながら、圧倒的な迫力の真作とゆっくり対峙できるのも、ここならでは。
そのほかにも、ルノワールやシャガールといった世界的芸術家の洋画絵画に加え、先述の横山大観、平山郁夫などの日本画も展示しています。特に平山郁夫の「流沙浄土変」は、平山作品の中で唯一三尊仏が描かれており、その神々しさは誰もが息をのむことでしょう。さらに、ガレの花器のほか重要文化財クラスの陶器の作品など、館内には約1600点が展示されています。この夏は、蔵王の豊かな緑に囲まれた"森の美術館"でアートな時間を過ごしてはいかがでしょうか?