変わっているふりをしたがる普通のオヤジ
相棒のオヤジは、どこからどう見ても普通のオッサンです。ただ、ちょっとだけ普通の人であることに抵抗感があるらしく、時々、わけのわからないことを言って、お母ちゃんとボクを困惑させることがあります。今年の父の日に息子たちからプレゼントされた電動髭剃器が大変気に入っているらしく、毎朝髭を剃るのが楽しみのようなのですが、最近、右手の手首が腱鞘炎になり、髭を剃るとき右手が痛くて使えない状態です。
そこで、左手を使って剃ろうとするのですが、右手のようにはスムーズに動きません。鏡を見ながらの作業は、手先の角度が逆に映るので悪戦苦闘しているみたいです。いつもなら、必ず道具のせいにして、悪態をつくのですが、さすがに息子たちからもらったものなので、それは気が引けるのか、自分の手に八つ当たりしています。オヤジ曰く。右手と左手は、本来別人格で、人という組織の構成員でありながら、左右はあまり仲が良くないのだというのです。
右手が痛くて困っていても自分の守備範囲ではないので助けようとしない。だから、左手がやる気がなく、上手く髭がそれないというのです。傍で見ているボクたちには、単に自分が不器用なだけにしか見えないのですが、必ず自分以外のものを犯人に仕立てなければ気が済まないようです。訓練すればすぐにうまくなるよ!と声をかけてあげたいのですが、そんなことは重々承知の上で、自分で自分に駄々をこねているだけですから放っておくしかありません。