ムサシにそっと語りかけいる息子
少し離れた所に住んでいる息子の一人が、仕事の都合でこの頃よく実家であるわが家を訪れるようなった。仕事の時間調整のためほんの数分で帰ってしまうのですが、気がつくとムサシがかつて愛用していたグッツをそっとなでているのです。彼の心の中にも私たちと同じようにムサシが存在していることがはっきりと見て取れます。
それもそのはず、そもそも、数あるワンちゃんの中からムサシを選び、わが家に連れてきたのは他ならぬ彼だったからです。当然ムサシも大好きで家に来ると、目いっぱいの愛きょうをふりまき歓迎したものでした。彼もこれに応えようとしたのは言うまでもありませんが、ムサシに触ると肌が赤くなるアレルギー反応を起こしてしまうのです。
それでも、ムサシの可愛さに負けてしまいいつも顔を赤く腫らしていました。今にして思えば、どうしてもっと可愛がることができなかったのだろうという思いがあるのでしょう。聡明なムサシはアレルギー反応のことをよく知っていたようですが、残念な気持ちはもっていたに違いありません。そんな思いが彼の背中から感じられました。