あいまいな「不要・不急」
新型コロナウイルス特別措置法が昨年13日に成立しました。この法律により、感染の拡大に備え、総理大臣が「緊急事態宣言」を行い、都道府県知事が外出自粛や学校の休講などの要請や指示を行うことが可能になったわけです。宣言を出す際には国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがある場合と、全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の2つの要件をいずれも満たす必要があると定められています。加えて、感染症の専門家でつくる「諮問委員会(現有識者会議)」に意見を聞くなどの手続きも必要とされる。こうした手続きを経て「緊急事態宣言」が必要だと判断した場合、総理大臣は、緊急的措置をとる機関や区域を指定し、宣言を出す。これを受けて対象地域の都道府県知事は住民に対し、生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染防止に必要な協力を要請できるようになる。また、学校や百貨店、映画館など多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示を行えるほか、特に必要な場合は、臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を所有者の同意を得ることなく、使用できるようになります。
さらに緊急の場合、運送業者に対し医薬品や医療機器の配送の要請や指示ができるほか、必要な場合は医薬品などの収用も行えます。この辺が与野党の意見がわかれ、審議が紛糾したようですが、結果的に、やむを得ない場合を除いて、国会に事前報告し、その後の状況も適時、報告をすることで落ち着いたようです。また、今回の事態による経済への影響を踏まえ、消費と雇用に重点を置いた万全の金融・財政政策を講じることや一定以上の減収があった中小企業や個人事業主などには事業が継続できるよう配慮すること、それに施設利用の制限などを要請する場合には、経済的不利益を受ける者への配慮を十分に検討するとしています。このほか、一連の政府の対応について、第三者的な立場から客観的・科学的に検証することなども盛り込まれています。さらに、参議院内閣委員会の付帯決議ではこのほか、緊急事態宣言を行う場合は、会議の議事録や根拠となるデータを保存し、国民に説明することや学校の臨時休校に伴い、仕事を休まざるを得なくなった保護者への支援に万全を期すことなども加えられています。
上記のように至れり尽くせりといった内容で、一見非の打ちどころがないように見えますが、正直言ってかなり違和感があります。まず、「緊急事態宣言」生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染防止に必要な協力を要請できるようになる」といくだりです。これは、俗にいう「不要・不急」ということなのでしょうが、いったい誰が「不要・不急」と判定を下すのか? もしも、街で警察官に、「あなたが今ここにいるのは不要・不急なことではないですか?」と問われた場合、はいそうですと答える人はどれくらいルでしょうか。また、本当は不要・不急だと自覚していても、罰則などを科せられるような場合は、なおのことそう答えないでしょう。緊急事態宣言が伝家の宝刀としての切れ味が国民に伝わらないのはそのためではないでしょうか。それなのに、強い罰則を設けたりしても効果は期待できない。ここはひとつ、政府が国民を徹底的に信頼している姿勢を示してみてはいかがでしょう。国民の底力は共助にあることを誰もが知っているからです。それには、まず、国民にやってあげるのではなく、一所にやりましょうという心温まるメッセージが何より大事だと思うのですが。