鹽竈神社周辺
市民が親しみを込めて、「しおがまさま」と呼ぶ奥州一之宮、鹽竈神社は市中心部の一森山にある。現在の社殿は江戸時代の造営。本殿・拝殿など建物だけで14件が重要文化財となっており、天然記念物「鹽竈ザクラ」などもある文化財の宝庫である。神社を参拝し、見学したら、街歩きに出てみよう。海方面に向かう東参道(裏坂)を下ると、途中に純和風の母屋と洒落た洋館を併設した「亀井邸」がある。総合商社「カメイ」(仙台市)の塩竃出身の創業者が大正時代に建てた邸宅だ。市が借り受けNPOが「海商の館」として管理・公開、市民イベントや観光客の休憩スポットになっている。東参道から愛称・鹽竈海道をまたぎ門前商店街の本町通りに至ると、鹽竈神社の末社・お釜神社に行き当たる。
塩竃の由来にもなった塩づくりの聖地で、ご神体の神釜の前での藻塩焼き神事(7月)が有名だ。その真向かいには「旧ゑびや旅館」。明治初期の、当時は珍しい3階建てで明治天皇の東北巡幸の際は大熊重信ら要人も宿泊した。震災後に市内のNPOが市民の協力で買い取り、「まちかど博物館」として再生。復元した客間の桜の天井画などが港町の粋を伝えている。1階には、雑貨・伝統工芸品も扱う「カフェはれま」があり、町屋風の情緒あふれる店内に心が和む。御釜神社脇の坂道を登った丘の上の重厚な2階建ては、杉村惇美術館(公民館本町分室)。全国でも先駆的な戦後の公民館活動の拠点で、2階を美術館に改装、塩釜ゆかりの洋画家、杉村惇(1907~2001)の作品や再現アトリエを展示している。
塩竃石の外壁や、アーチ型のモダンな建築様式が目を引く。このほか、鹽竈海道や本町通り沿いには、浦霞酒造元の「佐浦」や「阿部勘酒造」の酒蔵、玉こんにゃくが評判の「萩原酒造」、銘菓「志ほがま」の製造元で店舗が国登録の有形文化財になっている「丹六園」、老舗の味噌醤油醸造元で味噌ジュラ―とが人気の「太田與八郎商店」など、レトロな和風建築が立ち並ぶ。さらに本塩釜駅に近づくと海岸通り地区が現れる。ここは震災復興の再開発中で、街並みを一新。国道の南側は、新装の復興被災店舗も入った高層マンション棟。北川は、すしの名店やホルモンの人気店などが、門前町らしいシックな装いで「塩竃・直会横丁」を構成している。