みやぎの銘菓(その1 ムッシュ・アルパジョン:クマの手シューラスク)
もこもことした形がクマの手に似ていることから名づけられた「クマの手のシューラスク」。シューラスクは、パンではなくシュー生地で作るラスク。本来なら横に切込みを入れるシュー皮を、縦に切るというアイディアはアルパジョンが全国初。その革新的シューラスクは、たちまちスイーツ好きの心を虜にし、爆発的ヒットを生んだ。このシューラスクの生みの親は、独学であらゆる菓子技術を学んだ増野英昭さん。25年前に石巻で創業、パティシエの国際コンクールが開催されるフランスのアルパジョン市から屋号をとった。創業当時から大切にしている理念は「バースデーケーキを買いに来ていただける店」。
愛する人や家族の記念日を祝福する店として、多くのお客様に選ばれることこそが、アルパジョンの存在意義と増野さんは語る。クマの手シューラスクの人気の秘密は、その味と食感。プレミアムシリーズは、シューの底までたっぷりとオリジナルブレンドのミルクチョコレートでコーティングされ、味に一切妥協しない。「当店ではシューラスク専用のシュー生地を使っています。フランスパンのラスクはガリガリして食べにくいけど、このシューラスクなら家族皆で楽しめると、幅広い年齢層のお客様に喜んでいただいています」。現在店舗数は、石巻総本店をはじめ全6店舗。その内5店舗が製造工場を併設している。
各店舗で提供している味は、プレーン、チョコレート、いちごみるく、はちみつ、季節限定のシューラスクの全5種類。季節のシューラスクは、12月1日からホワイトチョコレート味が楽しめる。「将来は6万坪の土地に"森のアルパジョン"の建設を計画しています。そこには、小麦や牛乳も自分たちの手で作る、農業と酪農を兼業した総括的なお菓子屋を作りたい。世界は効率性ばかりを重視したA1技術に猛進していますが、私が最も大切にしたいのは人間が持っているノスタルジー。それを教えてくれたのがこのお菓子たちです」。より美味しさを求め、日々改良を重ねるアルパジョン。そのお菓子のすべてに、増野さんの高い志と壮大な夢が反映されている。