ほや天ぷら
日本で出荷される8割が宮城県産という「ほや」ですが、水揚げ量はほぼ大震災前の水準に戻ったものの、輸出されていた6ないし7割の販路が再開されていないため、市場には以前の倍以上が出回るようになっています。甘味、苦味、酸味、塩味、旨味の5つの味覚をすべて感じられる唯一の食材で、ほやを美味しく食べるには、鮮度が非常に重要です。
そのため、遠隔地へ生のまま流通させるのは難しく、最近は蒸したものや味付き、ほやキムチなど様々な加工品も開発されています。生食が一番と思いがちですが、手を加えれば新たな味わいが楽しめます。例えば、ほやの天ぷらは、ほや好きはもちろん、生臭さが苦手という方にも大好評です。身が厚くなる6月から7月がもっとも食べごろを迎えます。
ほやはとても消化吸収がよく、タンパク質を摂るのに適した食材です。90%は水分ですが、ビタミンやミネラルがたっぷり凝縮されています。疲労回復や集中力を高める効果が高いグリコーゲンは、春のほやに比べると夏のほやの方が8倍近く含まれています。他にも1個分で1日に必要な量の1/3を得られる鉄分や、認知症予防に効果があるといわれている脂質のひとつ、プラズマローゲンも含まれています。
海水の中では、上部の入水孔(+マーク)と出水孔(-マーク)は開いていますが、水揚げされると両方とも閉じて体内に海水を閉じ込めてしまいます。ホヤの子供はおたまじゃくしのような姿をしていますが、一度岩や貝殻に付着すると一生そこから動かず、また、動物では唯一、植物と同じようにセルロース(植物繊維)をつくり出せる珍しい生物です。