峠の湯 追分温泉
北上川河口付近から山に登って行った峠にあるのが追分温泉だ。建物は昔の小学校の木造校舎をイメージした造りで、玄関前や廊下の照明は小さな笠の裸電球、休憩室には黒板がかけられ、レトロな雰囲気に気持ちがほっとする。部屋は和室。格子窓に障子、冬になると炬燵が置かれる。炬燵に入ってふくふくと過ごす心地よさは、現代的洋風生活の中では貴重かもしれない。食事も夕食は部屋で取るスタイルなので気兼ねなく楽しめる。
その食事は海の幸が豊富だ。館主の横山宗一さんは日本料理店で修業した調理人として腕を振るっている。石巻、南三陸の新鮮な魚介類を仕入れ、手間を惜しまずに美味しい料理に仕上げている。旬を味わえる逸品ばかりだ。浴室は渡り廊下を渡っていく別棟にある。大浴槽には樹齢約500年というカヤの木をふんだんに使っていて、温泉と木のぬくもりにとっぷり浸る気分は格別。浴室前の広いホールにはカヤの木の一部がオブジェのように立っている。
畳のスペースも設けられ、風呂上りにゆっくり休めるのもいい。このホールで行われる「満月ライブ」も楽しみのひとつ。満月の週の土曜日に横山さんと仲間の3ないし4人で歌とギターなどの演奏を披露する。また、横山さんはクラシックカーもすきで、玄関前に置かれた車は現役。興味がある宿泊客が部品を探してきて交換してくれることもあり、そんな仲間あっての宿だと感謝する。山の宿に滞在すれば、あちらこちらで小さな楽しみが発見できそうだ。