手討ち蕎麦 OTAFUKU(おたふく)
国宝大崎八幡宮近くの国道48号から、坂道をほんの少し登っただけなのに、静謐な住宅街が広がる。小さな看板を見つけ、石段を登ったところに、築70年という古民家の店舗があった。暖簾をくぐった奥には、古き良き昭和が香る空間が...。「この落ち着いた雰囲気の中で、こころづくしのそばをゆったりと楽しんでいただければ...」と、店主の阿部直樹さん。国内各地のそば産地に出向き、その時々の選び抜いたそばを買い付ける。
これを石うすで自家製粉し、つなぎなしの手打ち十割そばとして提供するという。メニューの「白」は、玄そばを脱皮してから、細かい挽きぐるみにしたそば粉を使うので、今日は山形・尾花沢産。一方の「黒」は玄そばを殻ごと挽いたものを、何種類かブレンドして打つが、今日は北海道産がペースとのこと。さて、目の前に出てきた合い盛りそばを手繰ってみる。なるほど色味が違うが、いずれも角がきりっと立った極細だ。
「白の方がやや香りが強いか?いやいや黒もいい。適度なコシと、のどごしもどちらもいい」という具合で、甲乙つけがたい絶品同士。鰹の効いたつゆですすれば、心満たされよう。そばにセットされる漬け物盛り合わせに加え、そば粉の衣で揚げたマッシュルームの天ぷらも、外がカラリ、中はふっくらジューシーで美味しい。オーブしてから3年余り。「そばを通じ、産地やお客様など、人と人とのつながりが、もっと広がり、深まっていくよう追求したいですね」と、夫婦はさらに先を見据えているようだ。