鹿落堂(ししおちどう)
一面のガラス窓から、仙台の市街を眺望できる贅沢な立地。足元に広がる広瀬川と周囲の緑も、魅力の借景だ。そばと甘みの店として2年前の4月に開店して以来、連日大賑わいのこの店。提供する味はもちろん、店内外と周囲にまで漂う、お洒落な空気も人気を惹きつけている。兵頭雅彦店主によれば、「地域や日本の風土と伝統、恵まれた食材を大切にしたい」そうで、メニューづくりをはじめ器や道具、店舗建築まで、地元近隣や国産素材を吟味しているとのこと。
一番人気の十割そばは、県内鳴子川渡産・鬼首産の玄そばを、栗駒の安山岩製の石臼で自家製粉し、手打ちしたもの。透明感のある極細麺は、しっかりと弾力があり噛むほどに香りが立つ。また二八そばは宮城、山形、北海道のそば粉をブレンドし、つなぎも国産小麦粉を使用。こちらはのど越のいい仕上がりだ。深みのあるつゆは,出汁には国産の枯れ節や利尻昆布などを使い、返しは白砂糖ではなく粗製糖を使って寝かせるなどと手をかける。
店内を見回すと、そば前の酒を交わしている客も少なくないようだ。彩り豊かなお膳を前に寛ぐ様子は、羨ましくも心楽しい。「内装も含め、ほとんど手作り。まだ駆け出しの身ですが、利便性よりも手間暇を選び、すべて本物を追い求めていきたいですね」と兵頭さん。甘味を担当する妻の紅(こう)さんも「この地に根ざし、地場のもの、身体にいいものを、美味しい形でお届けできるよう努めます」と話していました。