寒梅酒造の「宮寒梅」
紅く丸い梅のはなびらが5枚...。シンプルなのに、なんとも愛らしいシンボルマーク。その醸造元を訪ねてみると、イメージ通りの小さい蔵ながら、しっかりと結ばれた家族の絆が、芳しいお酒を醸し出していました。米どころ大崎市の田園地帯に、酒蔵というよりも、昔の小さな学校か町工場のような雰囲気が漂う建物です。3年前に訪れたとき、「震災で、奥の仕込み蔵は全壊しました。どうにか再建してやっと軌道に乗ってきました」と説明してくれたのは岩崎真奈さんでした。大正7年に岩崎酒造として創業しましたが、戦争で中断、昭和31年に再開し、翌年寒梅酒造と改称しました。現在は4代目蔵元、父の隆弥さんのもと、真奈さんと常務の健弥さん夫婦が中心となって、酒造りを進めているという。
原料米は、蔵元自ら手がける自社栽培米をメインに、すべてが宮城県産で、年間生産高3ないし4百石の全量が純米酒以上の特定銘柄種。こうしたこだわりは、平成10年からの蔵改革で外部の杜氏をやめ、自社スタッフだけで酒造りを始めたことにより実現しました。10年前に真奈さん夫妻が蔵に入ると、目標とする酒質がより鮮明になり、細やかな手作りの酒を醸してきた。「若い方々や女性たちが好むような、香りの善い酒を造りたいですね」と真奈さんが言えば、常務も「一杯で旨い酒。香りが華やかで、米の旨味もあり、後味のキレが良い酒です」と口を添える。震災で建て直した仕込み蔵は、明るく整然としています。目についた真新しい和釜は、3年ほど前にデビューしたものだという。麹室では美しい麹がゆっくり呼吸しながら、完成を待っています。
そして、酒母室にはフルーティーな香りが立ち込め、仕込みタンクでは醪がフッフッと発行中です。酒造りでは毎日のデータ分析が欠かせないため、分析室でも、新しい機械が活躍している。タンクごとの検体の、アミノ酸やグルコースの状態を数字化するのですが、精度が高まった上、作業時間が従来の半分以下で済む。「その分、人間の手作り作業が大事なところに回せますからね」と真奈さん。出来上がった酒はマイナス7度から4度の大型冷蔵庫に、全量を瓶詰め貯蔵管理します。「タンクブレンドはせず、それぞれの味を大事にしようと分けています」と常務。その時々の思いが味になるとしたら、それを生かしたいと思うのは当然でしょう。二人が女性に勧めたいというのが、香りがフレッシュで華やかな「宮寒梅純米酒45%」。チーズや卵料理に合うそうなので、賑やか女子会にもってこいです。