ユーズドファニチャー&テーブルウェアHYGGE-ヒュッゲ(1)(青葉区支倉町)
仙台の繁華街に近い住宅街に、風情あるビルが佇む。「築60年の個人病院だった建築で、1~2階が店舗です」。沼倉透代表が出迎えてくれた。上品なマリア像のペンダントがあると思えば、壊れかけた昆虫標本、大小の家具や雑貨......。多種多様な品が並ぶ2階メインフロアは、むき出しの内装とも相まって不思議な雰囲気だ。「品揃えのコンセプトはありません。しいて言えば、自分が欲しいものですかね(笑)」。現在の品は主にフランスやベルギー製で、アフリカ系移民の道具や、一部日本で仕入れたものもあるという。チェストから見つかった図面、手描きの家系図、鉄製工具やパーツ類......。木の塊のように見える家具は「セヌフォスツール」と呼ばれ、アフリカ・セヌフォ族の椅子だそうだ。
かなり古びた食器棚に、飾りのないペンダントライト......。この辺りは1950年前後のものが多いそうで、まさにセピア色の世界。じっくりと対峙すれば、物たちが語りかけてきそうだ。2006年に創業するまで、店舗デザインや家具製造に携わってきたという沼倉さん。「この仕事に辿りついたのには、理由があるんです」。今でこそSDGsが叫ばれるが、20年ほど前の木工所勤務時代は、家具作りで出る木屑の多さに驚いた。また店舗造作の現場では、内装を定期的に替えるのが当然と、数年で取り壊して膨大な廃棄物を出し、金をかけて焼却する。「何が哀しく思え、不本意でした。そこで、修理して使い続けるアンティークの道に......」。古道具をいかすことは、SDGsにつながるのだ。
1階倉庫兼作業場に、修理を終えた大きな家具がどっしりと構えていた。 フランスの工場で使われていた道具入れらしく、白いペンキ塗装といい、もとからある補修の痕跡といい、エキゾチックな存在感がある。「私が扱う家具の多くは、業界でいう"ブロカント"。アンティークとリサイクルの中間です」。調べると、ブロカントは仏語で直接的に"中古品"の意味だが、業界的には"美しいガラクタ"と表現するという。アンティークほど古くもないが、時の流れが創造した美しいガラクタ。素敵な響きだ。「家具の修理はかなり気を使います」。使えるようにするのが原則だが、アンティークの持ち味を損なってはならない。またガラクタ部分を失ったキャビネットなどは、地震に備えて網戸張りにするケースも増えている。