ローズボールアンティークス(2)(若林区伊在)
「一番町で古着屋を始めたのが1985年でした」とは、創業者の菊田豊さんだ。当時、日本の若者はアメリカが裕福だった1950年~60年代のライフスタイルに憧れ、現地で仕入れたヴィンテージ古着が大人気となる。「一軒家を持ち、大型冷蔵庫はいつも満杯、庭でワインとバーベキューをするような、そんなアメリカンな生活が夢でしたよね」。しかしその後ファッション界は、大きな変換期を迎え、そこで菊田さんは流行に左右されにくく、長く使えるアンティーク雑貨へとシフトチェンジを図ったのだ。昨年秋から再開した買い付けは、年3回、それぞれ20日間をかけてアメリカ西海岸を巡る。「35年も通い、対象も服飾から道具に変わったけれど、やはり現地での買い付けは楽しいですね」と菊田さん。
阿部さんと2人、レンタカーで毎朝早朝から深夜まで駆け回って買い集め、40フィートコンテナの船便に載せるという。現地にはなじみの店があり、こちらの好みの品物を取り置いてくれるケースもある。「今回到着したシューシャインスーツもその一つ。長年見てきた中でも最上級品で感動しました」。1910~20年頃の靴磨き椅子で、木材とスチールによる曲線美、ジャパンカラーといわれる金と黒のあしらいなど、確かに見事だ。ソルト&ペッパー入れの人形も、オキュパイドジャパンと呼ばれる希少な品とのこと。戦後のアメリカ占領下で、日本が制作・輸出を命じられたもので、底面に「made in Japan」の文字が読める。また、はなやかな時代を映すポスター、ビックなアルミバケツやレトロな洗濯板、鉢置きなどのガーデニンググッツも女性に人気という。
自分なら暮らしにどう生かすか、どう触れ合うかと、つい考えを巡らしてしまう。阿部さんは、「私はサラリーマンから転職して4年目。もともと服飾雑貨に興味があったけれど、アンティークの魅力は別次元ですね。体力を使う厳しい仕事ですが、それに勝る手ごたえがあります」と頼もしい。店を切り盛りするスタッフは常時4人で、修復作業も全員が手掛ける。例えば先述のアイロン台も状態により解体・洗浄、表面を滑らかにしてから組み立て直す。また、照明器具のコードやソケットはフルチェンジが必要だ。取材中も客の出入りは絶えない。インダストリアルコーナーは男性に大人気。車関連のメーカーのロゴ入り道具が並ぶ他、独特のフォルムが美しい万力など、相当の価値のものも多い。「業務用、プライベート用とも、気軽にご相談ください」と阿部さん。ぜひ、アメリカンアンティークの世界を訪ねよう。