金源堂(3)(仙台市青葉区広瀬通り)
現当主、政伸社長の話も興味深い。「大学在学中から茶の湯を習い、卒業後は京都の大徳寺龍光院さんに、数ヵ月お世話になりました」。行儀を習い、禅宗と茶道のつながりも学んだ。「禅宗の生活は今のSDGs。無駄がなく、洗練されています」。食事の所作や作務にも意味があり、周囲への気遣いも怠りない。これが茶事の流れやしつらえとなり、おもてなしの原点だという。「最近、主人が京都で知り合った呉服店さんと、コラボ商品も作りました」と妻の清香さん。お洒落なオリジナル小物たちで、老舗に新しい風を吹き込む。現代社会、和のスタイルは敬遠され気味だ。
しかし伝統文化や工芸技術、携わる人々の生活を守っていかなければならない。「妻と試行錯誤しながら、若手作家さんの展示会を積極的に行っています」と社長。新進の作り手が育ち、一方で新しい器を探す使い手も必ずいるはずだ。清香さんも「全国にアンテナを向け、双方の橋渡し役をします」と頼もしい。店には「祖母がそちらで求めた器に合わせるものが欲しい」など、世代をまたいだ要望も出る。「ありがたい。親族が連携しながら、しっかりお応えできるのもうちの強みでしょう」とのこと。ところで最近来店した有名人は?と尋ねると「まだ父の頃、デビット・ボウイが来たのに、店の誰も知らなくて、残念」。
1991年の仙台ライブ! 写真が残っていれば大感動だった。今後を展望すると「生活は変わっても、変わらない良い物もある。時々立ち止まって見直したいですね」と先代。「受け継いだ伝統を守りつつ、多様化の波にもついていきたいです」と社長。本来なら、社会学級でのお茶会体験など、地域に根ざした活動も積極的に行っている。しかしコロナ禍では、店内での予約制お茶会程度。早い活動再開を期している。「私は金源堂の中継ぎ投手。今後、業態が変わるかもしれないけれど、確実に次につなげたいですね。まず300年を目指して」。社長がしっかりと締めくくった。